夜の鮫  第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト二十句連作部門参加作品

平 健一郎 (たいらけんいちろう)

夜の鮫

ノクターン白き素肌の花林檎


夜の鮫ボクサーの眼に無垢の海


手は胸にケーナの調べ凍蝶に


霜の夜の果てに星空響きけり


拳闘や骨軋むほど雪しまく


月と樹の尽きぬ語らひ雪兎


惜しみつつかたくなに待つ冬芽あり


冬木立熱き背中の揺れにけり


海しづか風に抗ふ麦芽立つ


瞬きの棘数多なる星冴ゆる


鍵盤や悴む十指やはらかに


湯浴み来しまとふは柚子の香のふわり


愛されて紅茶澄みたる冬籠


初恋の記憶小春のやうにあり


冬萌や古き絵本を懐かしむ


手をつなぎ歩みてうれし息白し


なごり雪次の恋までねむる駅


冬星座仰ぎ指さす生かされて


返り花ロードワークの熱き息


ジム通ふ錆びた自転車淑気満つ


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