第3話 起動する白い機械

5人は、5.5mもある黒い巨体から目を離せずにいた。

「…デマじゃなかったな…」

「…それより、バッテリー切れる…」

「今すぐ施設内に外部電源を繋げろォォォ!」


「んじゃあ、改造を始めるか…」

ちょうど工具箱と材料を運び終えた所に、オオツキがやって来た。

「装甲の厚さは?」

「大体コイツが30ミリだから、50ミリで良いか」

オオツキが、溶接機のセットアップを行い始める。

「材料費は?」

「…強奪?」

「は?」

「冗談冗談!大量の株を買ったから、配当金1年分でタワーマンション3つは買える位になってる」

「大体何円なんだよ、分かり辛い」

「大体5億とか」

「今回の改造と維持費に掛かるのは」

「全ての戦況で満身創痍になり、出来るだけ戦闘を避けて9億」

「改造だけで」

「2億だけど、実際には1.5億で済んだ」

「流石、有能なショウビさんですねー」

「褒めてねぇだろテメェオオツキこの野郎」

「改造には何日掛かるんだ?」

「80日」

「おっ早いじゃん」

「全員飲まず食わず寝ず24時間労働で」

「ご容赦ください」


こうして、コードの改造が始まった。

溶接機の使用中に、オオツキがやって来た。

「装甲は何を使うの?ル○チタニウム?」

オオツキが、メガホンで話かける。

「最近開発された超最硬鋼を使う」

ショウビが、メガホンで話す。

「ガキみたいなネーミングだけど、鋼と何が違うんだ?」

「鋼と炭素の黄金比を見つけたんだとよ」

「へぇ〜」

「結構金かかるけどな」

「それより、作成を手伝ってくれないか?」

「アニメ見なきゃ」


「何をつけるの?ビームジャベリン?」

空間装甲の作成中に、キキョウがいつの間にか死角にいた。

「キキョウ様、燃費を考えてくださいまし」

「…じゃあ何を使うの?」

キキョウの顔がほんの少し曇る。

「ヒートサーベル」

「なんだか脆そう」

「ヒートサーベル、どんな構造してるか見たくない?」

「見たい見たい!」

「ほんの少し材料を持って来てくれないか?」

「じゃ、開発頑張って」


「遠距離武器とか付けないのかい?」

キサミが、塗装工事中にやって来た。

「アイデアが浮かばない」

ショウビがマスク越しで話す。

「そう、何か特殊な事はあるかい?」

「うーん…噴煙機で発電が出来たりとか、アシストAIを接続できたりとか、肉弾戦が出来たりとか、搭乗者の意識を1つにしたりとか、コードのモノアイと違ってデュアルアイだったり…」

塗装ミスも気にせずに話す。

「…中々に危険なマシンになりそうだねえ」

「それより、手伝ってくれないか」

「…用事を思い出した」


「燃料って何なんだ」

出力計算中に、オオツキがやって来た。

「まーたオオツキかよ、次はケンジが聞いて来ると思っていたんだが」

あまりに早いタイピングで、上手く変換出来ていない。

「アイツは外の見張り」

「珍しいこった」

「んで、何なんだ」

「コードは水素エンジンだが、こっちは特別製だぞ」

「燃料は?」

「液体窒素で冷却発電してる」

「周りを覆うフィルターにもなれるし、空気から窒素は取り出せる」

「更に凄いのは、開発する予定の口の辺りから気化した窒素が出て来るんだぜ」

「まさしくロマン機だな」

「ちょっと作るの手伝ってくれないか?」

「…まあ、こんなに質問しといて、手伝わないのもなんだし、少しなら手伝ってやるよ。

劇場版シリーズ8部作を見てから行くから、待っててくれ」

 

約1日後


多忙なショウビの元に、オオツキがやって来た。

「すまねぇ、結構待たせた。

んで、何をすれば良いんだ?」

「やっと来たか。じゃあコレをやっててくれ」

オオツキの目には、パソコンと机だけの密室が見えるだけだった。

「なぁショウビ、何をすれば良いんだ?」

「動作テストだけだ」

ショウビが、顔も向けずに話す。

「…」

オオツキが、命令に背き、計算ソフトを閉じ、検索ソフトを開いた瞬間に、下半身に痛みが走った。

「イギャア!」

たまらず、オオツキは奇声を上げて飛び跳ねた。

「俺を手伝ってくれる奴が来たかと思ったら、俺を1日も待たせたんだ…このくらいは簡単に出来たさ…」

ショウビが不気味な笑みを浮かべた。

「…才能の無駄使い」

痛みで床に這いつくばっていたオオツキがつぶやく。

「何か言ったか?」

ショウビが、出来の良い作り笑いをしながら、こっちを見た。

「何でもないです」


こうして、約120日が経った。

「なんだよ、このバカデカイパーツは…」

4人の視界の先の、巨大な楕円形の鋼の塊を見つめていた。

「2200年の努力の結晶」

ショウビが、電源コードを内部電源に繋げる。

「何の部品なの?これ」

キキョウが、楕円形の鋼を叩く。

「?本体だけど」

「悪い冗談じゃないか、こんなにトロそうな機体、特攻でもしようってのかい?」

キサミが、塊の前で横になって話す。

「いや、パーツが入ってて、あとは勝手に作ってくれる」

「大体何日?」

キキョウが、キサミの隣で横になる

「うーん…14日」

「早っ」

「じゃあ、完成するまで、この子の名前でも決めない?」

キキョウが色鉛筆を持って話す

「もう決めてるserver《サーバー》で行こう」

ショウビがいつの間にか、でかでかとサーバーと英語で書かれた白い厚紙を持っていた。

「私、server《セーバー》って読めたんだけど」

キキョウが、ひらがなでサーバーの下にせーばーと書いた。

「セーバーの方がカッコ良くないか?」

オオツキが、悪い顔をする。

「ならば、多数決で決めようじゃないか!」

ショウビが自信満々に話す。

「サーバーが良い人!」

…ショウビ以外に手を挙げる者は居なかった。

「セーバーが良い人ー」

4人が手を一斉に挙げた。

「…もういいよ…セーバーでもサーバーでも…」

ショウビが顔を下げる。

「まぁまぁ、そう落ち込むなよ…」

キサミがこっそりとプレミア価格のフィギアをショウビに渡した。

「…」


約14日と30分後、ショウビはいつも通りのハイテンションで皆より早くセーバーの前に集っていた。

「ったく、1時間前集合は当たり前だろぉ?」

オオツキが二番手でやってくる

「それを言うなら10分前だr…」

整備施設に着いた瞬間に目隠しをされた。

「やっぱりSFは80年代に限るでしょ」

「そんなオーパーツみたいな物を求めるのはキサミさん位でs…」

オオツキに続きキキョウ、キサミも目隠しをされた。

「ふーんふn…」

鼻歌を歌っていたケンジに目隠しがされた

「やぁ皆!」

いつもうるさいショウビの声が、広い施設なはずなのに良く響く

「目隠し取っていいか?」

「目の周りの皮膚が取れていいなら」

「この…」

〔セットアップ完了。指示をお願いします〕

オオツキの声を遮り、人口音声が話す

「何なんだいm」

「皆が目隠しを取ったらスタートだ」

〔了解〕

今度はショウビがオオツキを遮った。

「ほれ」

ショウビが4人に剥がし液を渡す。

「目に入っても大丈夫なやつねコレ」

ショウビの発言に安心した3人は目隠しを取った。

「剥がし液があることを先に言っておいてくれよ」

ケンジが、痛さで目も開けられない状態で話す

「…すまん」

ショウビが軽く謝った。

「しかし、バカデカイ奴だな…」

オオツキが目を丸くする

「そうだった始めてくれ、ツディ」

〔音声認証でホストの命令を確認。前回の会話から命令次項を実行します。〕

「おい何なんだよツディって…」

『ガコン!』

大きな音と共に胸の辺りのコックピットが開いた。

「おぉ…」

目隠しの跡が残っているオオツキ達が目を輝かせる。

「お披露目会ってことか…」

ケンジがつぶやく。

〔第一タスクコンプリート。第二タスクを実行します。〕

通常のコードよりも1m大きい5.5m、20tの巨体がジャンプを始める。

「生き埋めになっちまうだろうがッ!」

「タスク強制終了!タスク強制終了!」

〔了解。第二タスク強制終了。体勢制御システム、火器調整システムのインストール後シャットダウンします。〕

「ふぅ…」

ショウビがため息をついた。

「こっちがふぅ…だよ!」

「全く…スリル満点なお披露目会だよ…」

皆がよろよろ立ち上がり、作業場を後にした。

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ロボット戦記 怠惰水 @LazinessWater

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