第2話 集う仲間
深夜、お世辞でもとても良い物件とは言えないアパートで、一人の青年がキーボードを叩いていた。
世紀末のようなこの再和でも一応、治安を守る組織があったが、インターネットで犯罪や、テロ組織を作るのは簡単なことであった。
そして、この青年も、テロ組織晴天の央を作ろうと必死になって、掲示板で仲間を集めた。同じ様な境遇であった仲間は4人集まり、晴天の央を支える大切なチームメンバーとなった。
晴天の央は、総指令兼総メカニックの18歳のショウビ(男)と副指令の18歳のオオツキ(男)とメカニック補佐の15歳のケンジ(男)とハッカーの24歳のキサミ(女)と物資補給の13歳のキキョウ(女)の五人の構成員で出来ており、それぞれが過去にかなりのトラウマを経験した者たちだった。
「やっとバイトが終わった…」
指を震わせながら、ショウビが、ボイスチャットに参加する。
「お前シフト入れすぎだぞ」
オオツキが、即座に反応をする。
「それより、例のブツは見つかったか?キサミ」
ケンジが、速攻で話を変える。
「例のブツって…あぁ!コードのことかい!何とか情報を集めてきたよ。」
キサミが、やや興奮気味で話す。
この世界において法律は無いけれども、暗黙のルールは存在している。ここ再和では、強大な力は許されるが中途半端な力は許されないのである。この暗黙のルールが出来たきっかけがあった。その昔、再和に長を求める者たちは、大きく3つの派閥に分かれていた。日再と文反、そして混沌の3つである。2170年、日再と文反の集中攻撃により、大型陸戦兵器を独占していた混沌派は、再和の一般人を大量に犠牲にしながら、構成員ごと消えて無くなったのであった。この際、日再や文反に対して大した構成員の数も無い混沌派、つまり中途半端な力を持っていた混沌派は、他の派閥に狩られてしまったのだ。その後、混沌派の戦利品の中にあった試作段階の大型陸戦兵器、別名コードが指導者勢力全体で作られ始めたのである。
「あったのか?」
オオツキが、声を震わせる。
「今、座標を送るよ。」
キサミが、立ち上がり、物音を立てる。
…数十秒の沈黙が続いた。
「おっ来た来た」
全員が、場所を確認した。
「それで、いつ行くんだ?」
「みんな明日は空いてるらしいけど、ショウビ、あんたはどうなの?」
「シフトをバックレてでも行くさ!」
ショウビが、1段声を荒げてやや叫ぶ勢いで言った。
そして翌日…
「ここで合ってるよな…?」
目的地には、ただの森林が広がっていた。
「!!」
多数の人影の気配を感じ、ショウビは身構えた。
「おっショウビ来てたんか」
男女混合の黒髪の4人組の団体が、こっちへ向かってきた。
「どちら様で…?」
脈拍が上がる
「ヤだなぁ。オオツキだよ、オオツキ。」
声ではオオツキだと思っていた。しかし、声の主が、約190cm、ガリガリに痩せ細っていて、すごいクマの大男だとは、想像もつかなかった。
「どう?ギャップ萌えした?」
2000年初期の死語を言ってくるものだから、笑いがこみあげてきた。
「いや、ギャップ怯えだな」
笑いながらショウビ言った。
「はいはい、本題へ移ろう」
ケンジだと思われる人物が、少し離れた所で叫ぶ。
「ケンジは、イメージ通りだったな。」
聞こえるか、聞こえないか位の声で、ショウビが話す。
「いや、俺も丁度さっき会ったばっかだから良く分からん」
オオツキが、目線をケンジに向けて話す。
「は?え?長い付き合いじゃないのか?」
ショウビは内心、少し安心していた。
「駅前で始めて会ったぞ。多分、ショウビが上り、俺たちが下りで来たからっぽいな。」
「ふーん、そうn…」
「すいませんでしたぁ!」
ケンジの無言の圧に、すぐさま平謝りした。
作戦会議が終わり、キサミが運転したトラックより物資を搬入し始めた。
「しかし、地下基地なんての、デマなんじゃない?」
キキョウが、休憩中のケンジに問いかける。
「いや、昔の新聞にも載っていたし、何より、地中レーダーが反応したから、間違いはないだろう。」
コーヒーを飲み終えて、立ち上がったケンジが言う
「でも、新聞に載るような場所が、指導者の奴らに狙われないの?」
キキョウは、間髪入れずに質問する。
「ここら辺は中立地帯だから、細かい調査は出来ないんだよ…ってお前、まさか怖いのか?」
図星だった キキョウは、顔を真っ赤にして、テントの長辺出入口を勢いよく蹴り上げて出て行った。
「本当にここであってるのか?」
オオツキが、地面を見る
「お前等、本当に疑心暗鬼だなぁ」
ケンジが、スマホを触る
「皆、開くから気をつけろよ」
『ゴウンゴウンゴウンゴウン…』
エレベーターの比にならない、しかし、そこまで響かない音が鳴る
『ギィィ…ギィィ…』
耐えられない金属音が聞こえ、地面が2つに割れた。
「な?」
ケンジが、満面の笑みを見せつける。
しかし、ケンジを見る者は誰もいなかった。
「すげぇな…これ…」
「普通は、指導者勢力に略奪されるのに…」
「これ、遠隔モーターで動くやつだ…からくりメカみたいな…」
「さっき確認したけど、内部が鋼が中心で出来てるらしい」
「まじかよ…資源不足だとか言われてる時代に…」
「………」
ケンジは、無視された事での怒りで、いい気分にはなれていなかった。
5人が地下へ向かい、大きな回し扉を開けると、そこには、真っ直ぐに伸びる廊下があり、手前に左右2つの木造建築の様な扉の無い7畳の部屋があった。
「おい…鋼って、廊下だけか…?」
ケンジの興が、少し冷める。
「いや…壁紙を貼ってるだけだと思うし、6畳もあるしさ?」
キキョウが、地下基地を庇う様に言う。
「しかし、高さが2メートルしか無いコードなんて聞いたことないぞ」
ケンジが、正論を言う。
ケンジがこう思うのも無理は無く、再和のコードは、約5.5メートルが基準で、この縦2.5メートルの地下基地では、到底無理なサイズであった。
「いや、奥に鉄の扉があるぞ!」
5人の興奮がぶり返す。
「俺が先に行く!」
「レディーファーストってやつでしょ!?」
「ここはまとめ役が行こう!」
「冷静な私が行くべき」
「こんなに迷うなら、全員で行こうぜ」
「グッドアイデア!」
「早速道具箱持って来い!」
「自分で持っていけ!」
2時間後、やっと全ての物資を運び終えた。
「しかし、家具まで物資にあったとは驚いた」
ショウビが、トラックで休憩をしながら話す。
「いやぁ、どうせ部屋が無くてもアンタ達コキ使って野宿は絶対に避けるつもりだったから…」
「それじゃあ、奥の部屋へ行くとするか!」
ショウビが、話を逸らす
「おーい、道具箱忘れてないか?」
「あ」
20分後、5人は地下基地の奥の扉に立っていた。
「よーし、行くぞー」
ほぼ何も見えない状態でショウビが話す。
『ガチャガチャガチャ』
「あれ…開かない…」
「ちょい離れてて」
キキョウが、回し蹴りを鉄の扉に食らわせ、瞬時に物理的に扉を開けた
「……」
4人が、鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をしている間に、キキョウが小走りで走り去った。
「俺たちも行こう」
5人が、暗闇の中に消えていった。
「誰か、スマホ持ってないか?」
とても声が響いた。
「ライトならある」
「早く明かりを点けてくれ」
「はいはい…」
『カチッ』
少しの光であったが、5人の瞳には、どこぞのSF作品の整備工場の様な、とてつもなく大きな施設が広がっていた。
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