たとえば

青いひつじ

たとえば


私の名前はむっちゃん。7歳の女の子。

最近 "たとえば" って言葉を覚えたの。


むっちゃんの頭の中は、不思議な世界でいっぱいいっぱい。




たとえば、たとえば

夜空に輝く星がぜーんぶぜんぶ、キャラメル味のポープコーンだったらいいのにな。




たとえば、

お父さんの大きないびきが、優しい子守唄だったらいいのにな。



たとえば、

太陽がお寝坊さんして、世界中お休みになっちゃえばいいのにな。





今日は雨だし、学校に行きたくないなぁ。




たとえば、たとえば、

お庭に咲いてる大好きなダリアとお話しができたらいいのにな。

ごきげんよう。今日はピンクのスカートがいいかしら、水玉模様のズボンもすてがたいわ。なんちゃって。




たとえば、たとえば、

おかしなピエロが、不思議な手品で学校をポンっと遊園地に変えちゃえばいいのにな。


落書きノートの電車に乗って、宇宙までひとっ飛びできたらいいのにな。




今日はなんだかお腹が痛くて、学校に行きたくないんです。




むっちゃんは、お母さんのお手伝い。

りんごの皮ってどうしてこんなに剥くのが難しいの。指でつるっと剥けたらいいのにな。



たとえば、町の灯りが真っ赤なちょうちんになって、毎日お祭りみたいになればいいのにな。


みんなの傘がお花になって、雨が降れば世界中がお花畑になればいいのにな。




たくさんのことが、もっと簡単だったらいいのにな。


 


たとえば、たとえば、

小人の宅配人が、ダンボールいっぱいに詰め込んで、届けてくれたらいいのにな。



たとえば、

この気持ちが、たんぽぽのわたげみたいに空を舞って、どこかの誰かに届けばいいのにな。




りんごを剥きながら、お母さんがいいました。

 


「むっちゃん。

伝えるときはね、ちゃんと心を込めて言うのよ」



 



明日は雨だけど、

早く、学校に行きたい。






たとえば、たとえば、






たとえば、お花を一輪差し出せば、

それは、ごめんねって意味だったらいいのにな。








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たとえば 青いひつじ @zue23

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