直ってもお熱い?

 それで、その処置後の姿というのが。

「なんだあ、このローテクは?」

 パイリァンの姿を目にした、それがトイトイ殿の第一声だった。

 まあ無理もない。クラブに置いてあった彼女サイズの予備の衣装のうちでもいちばんの厚着を着せられた上で、羽毛を封入したタオルをぐるぐる巻きにされた、大きなミノムシみたいな見た目なんだから。ロボという言葉から連想されるハイテクとは無縁のこの姿。

うちに帰ったら、一番厚くて、できれば楽に着れる服に替えるんだね。そんでなるべく柔らかくて厚い布地を重ねる。本体と一緒にひととおりそろえたっしょ?」

 マスターが予後の注意を告げて、彼女の処置はこれで完了である。

「発熱なんだから、冷やした方がいいんじゃねえの?」

 首をひねるトイトイ殿に、吾輩が答えを補足して差し上げた。

「そこは事態の本質を見誤らないことですね。発熱自体ではなく、温度調節できないことが問題なんです。分厚い布地で覆うことで、冷やされることも熱せられることも防ぎ、外部の温度変化を最小限にするんです」

 吾輩の視線を感じて、患者パイリァンは熱ではなく頬を赤らめて目を反らせた。

「こんな格好、お兄ちゃんに見られるの恥ずかしい……」

「我慢して。長くても今日一日の辛抱だからね」

 やわらかく笑いかけた吾輩を見て、マスターがまた唇を尖らせた。

「あーもう、お熱いお二人ですこと!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

穂妻学園の故事成語 ~昼飯前~ 飛鳥つばさ @Asuka_Tsubasa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ