第17校 天災と鬼才と奇才が天才に嫉妬する理由
〔1〕
この世界は実力至上主義の
その点この学校は現代社会におけるその理を体現している。生徒一人一人の価値を金額という形で可視化し、己の社会的価値を学生のうちに自覚させている。だから能力の低い子が将来社長だとか一流企業就職を夢見て目指そうとする傾向がこの学校では少ない。Aクラスという将来が約束された自分より格上のエリートがこの世界にはいることを在学中の3年間で痛いほど実感させられるから。
DクラスはAクラスに恐怖して、AクラスはDクラスを
けどごく
私はそいつを天才と呼ぶ。完璧とは最もかけ離れた存在。決してAクラスの中には生まれないイレギュラーは絶対的な才能を持ってエリートを喰らう。
「厄介な学年に就いちゃったな〜」
そして東條真希は深くため息を吐く。
〔2〕
1年Aクラスの陥落。実力も才能も劣っているであろう1年Dクラスの阿久津真尋が1対1のタイマンを制した。
その事実を目の当たりにしたDクラスは沸き、Aクラスは嫌悪感を抱きながら
「えーマジかよッ!!」
「てか超能力どうした?最後使わないで死んだくね?」
「Dクラスだからって舐めすぎだろ。一応腐ってもサイキッカーなんだからよ」
「でもあのヒョロ男もなんか超能力使ってたか?」
様々な憶測が飛び交う中。誰もがその不自然な決着に首を傾げていた。何故宇都宮は降参したのか?阿久津真尋は一体どんな超能力を使ったのか?いずれにせよこの試合の勝敗が決するまで明かされることはなかった。
一方で試合は滞ることなく足を進める。阿久津を通り過ぎ、クリスタル破壊に向かった天海は敵陣を前にして困難を極めていた。
「あーくそッ、マジウゼーなお前ら。ちょこまかちょこまか戦いやがって!!正々堂々前に出てこいや!!」
前方およそ30メートル先。破壊すべきクリスタルは目の前にあるものの今のところ傷一つつけることができていない。天海の超能力である発火を使用しても尚、展開は変わらない。
「テメェだ眼鏡野郎。さっきから一歩も動かねぇでよぉ!それでいいのか?アァ!?」
「言ってることが分からないね。僕はSBでクリスタルを守る事が役目。僕の術式を破れないのであればそれは君の落ち度だよね?言いがかりはやめて欲しいな」
両手を広げて立ち塞がる月山。天海が炎を球体する術式を行使し、投球しても全てが土の壁によって阻まれてしまう。イライラが蓄積する一方であった。
「あーそうかよ、つまりなんだ。お前は俺の超能力より自分の方が上だって言うのかよ」
発火し続けていた
「動かないで」
天海がクリスタルに近づくことのないよう牽制し続けていた鳥海。自身の術式を行使し鉄弓を精製しては矢を引き続けていた。
「はいはいどーぞどーぞ打ちたきゃ打て。にしてもSFがこんな後ろまで位置下げてよ。攻めなきゃ勝てないんだぜ?」
先ほどまで余裕のなかった態度とは変わり、強者としての余裕を見せる天海。煽りを狙いとしているものだろうが、鳥海と隣に控えている小林には対して響くことはなかった。
「たじな、挑発に乗っちゃダメだからね。敵陣のクリスタルは相手のFWを少しでも削ってから壊しにいけばいいんだから」
「うんわかってる、でも阿久津君すごいね。Aクラスの女の子1人で倒しちゃったよ」
「ほんとにね。でもあの話が本当なら尚更、その時になったらコイツは私たち3人で落とすよ」
月山、鳥海、小林の視線が一斉に天海に向けて交錯する。僅かな息遣い、手指の動き、視線の向きなど些細な変化を見逃さない。
「領域、展開」
腕の筋肉が軋むと同時に鳥海の矢が天海の太腿目掛けて放たれる—————が、それは虚しく宙で泥のように溶けた。
「え!?」
術式”火炎網”
天海を中心とした半径5メートルの領域内にて発生する超高熱空間。木は木片すら燃やし、鉄は泥状化させて跡形も残さない。
「俺の周囲の空気は500℃を超えている。3人まとめて降参しねぇと五体満足の体じゃいられなくなるぜ?」
額に青筋を浮かべ全身を震わせる天海。誰が見ても限界近くまで超能力を振り絞っていることは明らかだ。
「無理してんじゃないの?それ間違いなく殺傷ランクAでしょ。いくらAクラスの人間だからってそんな術式簡単に操れるほど優れてないはずよ」
テレビや新聞などのマスメディアでしかお目にかかれない高ランク術式。小林自身は最大でもCランクの索敵術式でしか発動できないため、それを易々と行使する相手に警戒を隠さない。
「だったら喰らってみるか?俺がAクラスを代表してお前ら雑草共を文字通り焼け野原にしてやんよ」
超能力の素となるサイコキネシス。暴発寸前まで高められると体内で術式となって変換され、小林、鳥海、月山に向けて高温の熱波が放たれる。
学園不適合者のサイキッカー〜男子生徒Aでいたいのに病み系美少女な君がいるから叶わないようです〜 櫻乃カナタ @kiiita
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