後書き【先生のアノニマ 2(上)〜後書き】

 某ロボットアニメのシャ○が好きで、あの英雄のような力を持つ男が「意外に普通だったらどんな感じになるんだろう」と妄想したら、何故か舞台が日本の学校になってしまい。男が普通なら女ははっちゃけたいよな。はっちゃけるならドンパチだよな。でも男の普通を書くんなら、日常に身を置かないと落ち着かないよな。などと散らかったアイデアを繋げたら、こんなん出来ましたー、という訳でして。女の方がシャ○みたいになっちゃって、男の存在感が薄くなって。でも主人公は、一応シーマ少佐というチグハグ振り。まぁ本編は彼の視点で語られるので、それでもいいんではないかい、と勝手に一人で納得しています。

 さて本編は、軍人やスパイが要塞化した学校ではっちゃけるという、小説でしか存在し得ない舞台(実際にあったら、私なら生徒としてそんな学校に通いたくはありません。自分で作っておいて何ですが)で展開しています。出張もあったりしますが。エンタメは有り得ない事に寛容的だと勝手に思い込んでいるので面白おかしくやっている訳ですが、有り得ない部署や組織をパーツとして集約させても、そのパーツ自体にはリアリティーを追求しています。私によって無理矢理集合させられた各パーツの深層にある心(思想や理念)技(知識や技能)体(色々な意味での力)を疎かにしたくないからです。本編ではそのパーツ達が明白に敵と味方に分かれていますが、人間の世において完璧なものは存在し得ない訳で、善悪両陣営とも突き詰めていけば、深層心理は混沌だと思っています。善陣営が頼みにする法や倫理、哲学などは無数にあり、とても全てを覚え切る事もまとめ切る事も出来ず、現代社会に当てはめてみると意外に穴が空いていて不完全だったりして。それだけ新しい概念が生まれていて、それに追いついていけず後出しにならざるを得ない。その後出しが出るまでに発生する悲劇は、メディアを沸騰させます。一方で悪陣営が頼みにする力は、際限がないように見えて実は全てこの世で生み出された何らかの力な訳で、無軌道のようでいて分かりやすいその物差しによる秩序が存在していたりする。つまり悪の秩序は収まりが良く、意外にまとまっている訳です。でも悪は悪な訳で。表向きには手放しで世に受け入れられるものではない。善も悪も完璧でないなら、何処かに矛盾を孕んでいる。より優雅にそれを混沌と、私は勝手に言っています。私を含めた一般大衆の大多数は善良なる弱者で、大なり小なり神様に縋って生きているものですが、その偉大な神様でさえ神話の中で争ってるんですから混沌も無理からぬものです。それにしても最初に神様の事を説いた人は、何故神話の世界にまで争い事を持ち込んだのでしょうね。一緒に鬼や悪魔もいたからって事でしょうか。食物連鎖の頂点で調子に乗っている人間に対する牽制なんでしょうね。天国と地獄の概念も。そんな事で怖がらせておかないと、人間なんて何しでかすか分からない。そこに人間の業の深さを感じるというか。各パーツを通してそんな混沌としたところを疎かにせず書いていきたい、と勝手に思っています。世の中表面的には善悪に分かれていても、深いところでは繋がっているものです。基本的には勧善懲悪のスタンスですが。

 性悪説が裏づけられる愚行蔓延る世の中ですが、その中において問答無用のゲンコツで物事を押し通そうとする不届きな輩共のために、紗生子のような超越した存在がお仕置きをする、という類いの話は他にも多くあります。それは否定しません。そうした世界がそれだけ世に受け入れられている、つまりやり切れないこの世で、みんなそんなスカっとさせてくれる存在を求めている、と勝手に解釈して、紗生子以下には前向きに活躍してくれる事を私自身期待しています。

 現代の軍人(それも米軍人)の話だけに、ロシア・ウクライナ戦争はどうしても避けられないネタでした。正直避けて、面白さだけを追求したかったのですが、そこから逃げては何処か嘘臭くなると思い、私なりの解釈で書かせていただきました。いつの時代も戦争は悲劇です。負の連鎖は止まる事を知りません。本編でも紗生子が「人類が次なる革新を迎えるまでに払う犠牲」を危惧していましたが、私も同じです。このままでは人類を滅ぼすような戦争がいつか起きるなぁと。あの紗生子ですら匙を投げた感があり、正直何とかして欲しいのですが、それを言うと紗生子に怒られそうで怖いですね。私一人に押しつけるなと。

 話は変わって紗生子と言えば、彼女は本当に作者泣かせでよく暴れ回ってくれます。モチーフはクシャ○なんです。トル○キアの姫様の。覇道を突き進むクシャ○が自由奔放になって、少しセクシャルになったイメージで書いているつもりでして。かっこいーっスよね、クシャ○。しかし私によって別の味つけが加味された紗生子の本性は奔放です。思い立ったが吉日、いけいけドンドン、行き当たりばったり。でも頭が良いから無茶苦茶やってもあっさり切り抜けちゃう。そんな具合で、作者である私ですら困らされます。クシャ○程じゃないけど、それなりに国政に影響を及ぼし兼ねない程の重責を担ってる筈なんですけどね。悪く言えば意外に適当です。後で帳尻を合わすタイプ。一応公務員なんで適当じゃ困るんですが。王佐の才を持ちながら革新的というか斬新というか。何せ市街地でミサイルぶっ放す人ですからね。無茶苦茶です、ホント。一番驚いたのは結婚ですね。勝手にしやがりました。油断したら何をしでかすか分かりません、この女。何考えてんですかねホント。「天才はネジが何本か外れている」とはよく聞きますが、本編でもシーマ少佐が「頭おかしいんじゃねえか?」と首を捻っていたのが痛い程良く分かる。ホントに好きで結婚したのか、それとも何か企んでいるのか。紗生子は私にさえ教えてくれません。美也子に仕えているスタンスをとっているので、やっぱりフィクサーに興味があるんですかねぇ。実際のスパイってのは、何かのアニメにもあったように実に緻密で勤勉でないと務まらないモンだと思うんですが。全然オープンというかやってる事は派手で、明らかに逆をいってるし。何か愚痴になってきたな。改めて、シーマ少佐の気苦労が分かる気がします。

 一方で、平和主義者のシーマ少佐は書きやすいですね。普段は地味な良識人の彼は、凡人の私に近しい存在です。結局、凡人に天才の事は分からない、という事ですね。性格が変われば人は完全に別人という事で、モチーフの参考にしたシャ○のかけらもありません、彼は。ポテンシャルだけシャ○って事で。でも内向的というか面倒臭がりなので、間違ってもシャ○のような野心はなく、一軍を率いるような事もありません。が、担がれる可能性はある? かも? 知れません。本人は絶対に嫌がると思いますが。ですが彼は、本気になったらそれぐらいの胆力を持っている一将なんです。スパルタ食に代表されるシンプルでストイックな私生活はまさに積小為大で、日頃の努力と研鑽の重要性を改めて認識させられるその具現のような男なんです。そこは彼のアイデンティティーに関わってくるのでここでは控えますが、研ぎ澄まされた肉体と感性は、現代人離れしている事は間違いなく、例えるならマサイ族の戦士のような、そんな先鋭な精鋭のイメージ。それをバックボーンに携えているからこそ普段はゆとりがあって寛容で、のんびり落ち着いているからこそ社会性の高さを形成したような。本編では紗生子の事を「胆大心小だ」と言っていた彼ですが、私に言わせれば彼こそがそうなんです。その本人が言っていたように、一分野で道を極めた人というのは、私も含めた素人からすると想像を絶する心技体を保有しているモンですから。普段はふにゃふにゃしているのでみんなそれに騙されている。能鷹隠爪ですね。甘井先竭から逃れるための。でも結局、しがらみに囚われてしまってるようですが。まぁ世の中使えるヤツをほっとく程のんきじゃないですよね。いて、何すんのよちょっと!? ん?「色々面倒な事になるから俺の宣伝をするな」だそうです。まぁ確かに、分からないでもないですが。そういう人財です、彼は。まぁその意を尊重して、彼の事はとりあえずこの辺で。

 私の作品では女性は強く美しく真っ直ぐに、男性は何処かとぼけた偏屈者の情けなさで書かれる事が多いですが、これも時代でしょうか。古今東西、強い女性も歴史に名を残していますが、やはり男性に比べると圧倒的に少ない訳で、今を生きる女性にはその元をとる勢いで強く輝いて欲しい、とこれは願望でもあります。物事を悪く言おうと思えば切りがないこの世の事、ネガティブな意見も多いでしょうが、女性や子供が元気でなくては生物学的に種として続かない訳ですから。勿論、そこに男性が必要なのも分かります。が、人類有史約何万年だか分かりませんが、少なくともここ数千年来の歴史では男性が威張り散らした訳ですから、一度ここらで引いても良いのでは、と個人的には思っています。

 これまでの人類史は、力ある者の歴史でした。人類が次なる革新を迎えるためには、そこに一つのヒントがあるように思えてなりません。国家の枠組みもそのキーワードの一つですね。無理矢理陸や海に線を引いて分け隔てるだけの枠組みは、もう何だかカビ臭い。そうやって無理矢理国家に閉じ込められる構図は、学区で仕切られた学校制度と被るような気がするのは私だけでしょうか。そんなところも織り交ぜていければ、と思っていますが、キャストがそんな暇を与えくれそうにないような気もする今日この頃。

 さて、散らかった事を書きましたが、後書きという事でご容赦いただくとして、シーマ少佐の学園での任務はまだ続く予定です。次なるシーズンでは普段は平凡な彼の事を、更に掘り下げて書ければと思っていますが、何分存在感が薄く目立ちたがらないヤツなのでどうなるものやら分かりません。一応、主役なんですが。これはこれで困ったヤツです。今も私の後ろで「主役は主幹でいいじゃんか。俺は脇役がいい。っていうか、エキストラ程度でいいんだけど」などと言ってやがります。紗生子直属の部下だけに、どうしてもその上司との絡みが多くなるのが玉にきずでして、そんなだから絶対にエキストラには成り得ないんですが。意外に我儘です。主役がそんなんなのに、他の魅力的なキャスト達はろくに出番がない。この格差は僻まれて当然ですね。今更追及が怖い。どーしよ。本編でも僻んでましたし、何人か。あ、後、紗生子の謎めいたところなんかも、少しずつ紐解いていければいいなぁと思っています。この場では詳しく書けませんが、紗生子の謎は暴露すると、紗生子に殺されるかも知れないので怖いのです。あ、今はお出かけ中なので大丈夫——そういやスパイだったっけ。ヤバいな。

 基本的には一つのシーズンを書き上げてからの掲載になりますので、早ければまた来年、彼らの続編をお届け出来ればと考えております。それでは再会出来ます事を祈念して、今回はこれにて。


            まと一石


二〇二三(令和五)年一〇月



追伸

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