『コヘレトの言葉』

『コヘレトの言葉』

空の空　空の空　一切は空

この日の下の　どんな労苦も

時代去り　次の世も去る　地は何も

変わることなく　これもまた空

日は昇り　日は沈みまた　繰り返す

風は南に　巡りて北に

川はみな　海に流れ込み　海は満ちず

川は出てきた　ところに帰る

すべてのことは　言い尽くせない　労苦なり

見るも聴くをも　足ることはなく

先のことは　後の世にもあり　為(な)されてく

新しいものは　一つとしてなし

富と知恵　名声をもつ　この私が

なされるすべてを　尋ね調べる

日の下で　行うすべての　わざをみた

なんになるのか　我は掴めぬ

誰よりも　知恵と知識を　得た我が

狂気、愚かさを　知ろうと決めた

風を追う　ようなもので何も　掴めない

知れば知るほど　悩み苛立ちて

天の下　何が良いかを　見るまでは

愚かさを身に　つけて生きよう

「快楽を、もっておまえを　試みよう」

笑いは狂気　快楽は無意味

事業、起こし　邸宅を建て　畑、広げ

快楽を得たが　すべては空(むな)しい

目の欲するものはなんにも拒まずに

心の赴く　ままに楽しむ

骨折った　あらゆる労苦は　風のように

全て空しく　消えゆく塵に

振り返り　知恵と狂気と愚かさを見た

跡継ぐ者も　またおなじこと

すべての者　同じ結末に　行き着くと

知った私は　空しいと言う

日の下で　行う業は　わざわいで

生きていることを私は憎んだ

虚しさの　中には悲痛と苛立ちが

心は夜も　休まらない

美しく　すべてのわざは　時にかない

一つも無駄の　ないことを知る