春の雹〈第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト俳句の部二十句部門参加作品〉

平 健一郎 (たいらけんいちろう)

〈春の雹〉

空の果て海も遠くに夏座敷


白日傘さよならの声まだゆれて


籠めてみせ蛍火ほのかてのひらに


わかちあふ夕べ錆風鈴吊られ


まだ胸の便りしたため沙羅ましろ


送り合ふ空の画像や青楓


野遊びの約束ほてる耳に風


おしやべりと白詰草のまつ盛り


誘われよ水の匂ひに蛇の首


日も土も匂ひて一人昼寝覚め


春の雹淡き水いろ跳ねにけり


色ふかきブランコの音鳴り止まず 


誰もみな攫はれそうなさくら貝


石窯に三月の熱パンの色


春の星やさし窓辺に祈る人


鶺鴒の誘ひ夫婦めくふたり


ほめらるる焼菓子作り木の根開く


ベルサイユ舞踏の金魚ひるがへり


それぞれの耳のかたちに夜長かな


雨上がり山郷匂ふ花おぼろ







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