天国までの一年

野森ちえこ

最期の息を見届けて

ステージ4命の期限きまった盛夏せいか


導火線 背中に爆弾骨転移


またひとつ あきらめ笑う秋の宵


好物の柿に願かけスーパーへ


坂道を転げ落ちては右往左往


最期までうちで暮らそうまだやれる


蕎麦きざむ とろみをかけて年の暮れ


命がけ危険がいっぱい杖歩行


入院中ぐんと進行認知症


母の手をひいて歩いた春の土


お風呂の日 浴槽組み立て職人芸


下肢かしと声 やまいに奪われ心折れ


誕生日迎える前後要注意


殺してと懇願されて揺らぐ夏


死を願うおなじ心で生を乞う


天国へ旅立つ鼓動力強く


できることなんにもなくて手をにぎる


吸いこんだ最期の息を見届けて


笑ってる 鼓動を止めた母の顔


また会おう死ぬまで生きてそのあとに


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

天国までの一年 野森ちえこ @nono_chie

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説