いじめサークル

高黄森哉


「へん。私は〇だったけど」


 七海ちゃんは秋ちゃんに自信満々で言いました。これは、昨日、夢で見たという、人間力テストの結果です。


「それで秋ちゃんは?」

「私も、〇だったよ」


 秋ちゃんは髪の毛を触りながら答えました。二人は、隣にいるてんちゃんに、視線を移します。


「じゃあ、天ちゃんは」

「私は、」


 彼女は聞かれて押し黙ってしまいました。どうも、どうしても答えたくない様なのです。


「あっ、×だったんだ」


 秋ちゃんは教室中に聞こえるように、そう叫びました。


「え、天ちゃん。×だったの」


 七海ちゃんはそう蔑んで、くすくすと笑いました。そして、


「秋ちゃんは私の仲間。でも天ちゃんは違う。だって、バッテンなんだもん」


 と残酷に言い放ちました。言われた当人は、悲しくて悲しくて涙が出てきました。フルフルと唇を揺らしています。その唇から震える声を出しました。


「い、いち」

「いち?」

「人間テスト、いってん」


 天ちゃんを虐めていた二人は、ああ、私達は零点だったんだ、といまさら知りました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いじめサークル 高黄森哉 @kamikawa2001

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ