晩夏の火種

月見トモ

晩夏の火種


 黒煙に包まれ滲む両の目や

 頭に浮かぶ思い出達よ



 止まらない砲弾の音耳塞ぎ

 先に止まるは命の音色



 瓦礫山泣かぬせい抱く母の背は

 今にも絶える蛍火ほたるびの様



 真っ黒な空に願いを折り飛ばし

 帰りを待つは父の飛行機



 撃ち殺し心に積もる罪悪の

 涙が流れ自死の決行



 婚約者いずれ帰ると約束し

 もう四十の時が過ぎゆく



 人として死する事さえ出来ないと

 悟った仲間義勇兵たち



 抗えぬ政府機関の汽車に乗り

 行先を知る「幸奪い合い」


 

 目に見える景色は常に灰霞はいかすみ

 永遠に感じる夏の休み日



 君は誰焼けただれた手握り締め

 伝わる温度冬の木枯らし



 銃口を額につけたその姿

 安堵の笑顔「さよなら」の声



 それぞれの正義の元に日は沈み

 夜鷹達の目煌々として



 爆弾を抱え衝突散る花火

 子供は無邪気「また見たいな」と



 藻掻きゆく逃げ場を探し身を投げた

 海は熱湯僕らの墓場



 争いの引き金は常憎しみか

 犠牲になるは幸の灯火



 奪われて奪い返したあの日々よ

 二度と戻らぬ抱擁の腕



 あの夏を取り戻せよと声がする

 今こそ誓う君を守ると



 もう二度と憎悪や欲の水底みなぞこ

 溺れ沈むな生ける者たち



 欲しがらず与え過ぎずに生きてゆく

 例え現実いまが難しくとも



 今を生き明日を生き延び未来へと

 永遠に願うは「どうか笑顔で」

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晩夏の火種 月見トモ @to_mo_00

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