第20話【都市伝説】逢魔ヶ時と赤いコトリ


 こんにちは。オカルトライターのMAYです。

 梅雨が明けたら、随分と日が長くなってきましたね。まだ暗くないからと夕方遅くまで遊んでしまう子供が増えていないか心配です。今日はそんな子供を狙う恐ろしい子攫い妖怪【赤い子取ことり】の都市伝説をお届けしますね。



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 今も昔も、世界中で【子取ことり】の事件は絶えることがない。人が子供をさらう事件も後を絶たないが、説明のつかないような神隠しの事件も少なくない。ゆえに我が国でも、子供を標的として攫う妖怪のたぐいの噂、言い伝えや風説は探すに事欠かない。

 以下に其の一例を記載する。



子取ことりぞ】

 妖怪、隠し神。夕方、外で遊んでいた子供がいなくなると子取りぞが出たという。攫った子供は油を搾られる。その油で南京皿を焼くという。


子取鬼コトリオニ

 西国地方の伝承。日が落ちた後に外で遊んでいる年若い男、特に【隠れんぼ】をしている男の子供が狙われやすいとされる。その姿は真っ赤に燃える翼を持つ天狗或いは大鷲とも言われる。攫われた子供は体の油を残らず絞り取られ、殺されてしまう。


【コドロ(子取ろ)】

 山東地方の言い伝え。親の言うことを聞かずに、いつまでも外で隠れ遊ぶ若者や子供を攫って、潰して絞り、油を取ると言われる怪鳥。メラメラ燃えながら、空を飛んでやって来ると言われる。


【コトリ(子取り)】

 明和時代、岩出いわで河堂かわどう村発祥とされる風評。夕方になると外で隠れんぼをしていた男の子供がいなくなるという噂が広まる。攫われた子供はくちばしのようなもので突き殺されて、油を抜き取られるとされる。妖怪は炎に包まれた赤い鳥ような姿で現れ、羽ばたきながら子供を掴んで攫っていく。この噂は次第に全国に広まり、親は相次いで子供に帰宅時間を早めるように言い聞かせ、【隠れんぼ】の遊びを禁止した。



 上記のような【子取り】の言い伝えは明和めいわ時代以降、岩出県河堂村、山東地方や西国北東部を中心に広く各地に知れ渡った。妖怪の呼び名や油の取り方等、多少の違いはあるものの、根幹を為す条件はある程度共通している。


 ①夕方

 ②子供(男)を攫う

 ③隠れんぼ

 ④赤い鳥

 ⑤油を取る


 伝言ゲームもしかりだが、始まりの事柄は人から人へ伝播されるうちに、次第に歪められ、抜け落ち、不正確になっていく。しかし、長い時を経て、世代も変わり、全国に蔓延しながら、【子取り】の伝承はどうして、これだけの共通する同じ条件を残し続けたのだろうか。私はそこに何らかの大いなる意図が隠されているのではないかと考える。


 夕方、赤い鳥=夕日、夕焼け、あるいは不死鳥。

 男の子供、隠れんぼ=行方不明。

 犠牲者は油を絞られ死んでいる=遺体損壊。


 こうしてみると【赤い鳥】は何やら不気味な存在のように思えてくる。


 夕方、昼と夜が入り混じる境目の時間は、古来より【逢魔おうまヶ時】、【大禍時オオマガドキ】、或いは【黄昏たそがれ(そ彼)】と呼ばれ、魔にう、災禍をこうむるという禍々しい時間として恐れられてきた。また、我々の現世とマガつ神のまう隠世が通じ、繋がる端境だと考えられてきた。民俗学者・柳田国男は著書『妖怪談義』の中で黄昏時について「元は化け物に対する警戒の意を含んでいたように思う」と記している。



 真っ赤に染まった夕暮れ時。

 すぐそこによくわからない何者かがいる。

 曖昧で不確かで恐ろしい何かが。

 常に警戒し、注意を怠ってはならない。


 ―――――それは実体化し、羽ばたきながら人を攫う赤い異形の神かもしれない。


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 そう言えば、MAYは最近気になる廃墟を見つけました。場所は西国地方北部の廃校になったとある中学校です。

 そこでは噂が二つあって、一つは【目玉を探す男】が校舎を彷徨さまようという噂です。もう一つは、【隠れんぼをする赤い子取り】が校舎のどこかに存在するそうです。


 もし、行方不明の男や赤いトリについて、情報をお持ちの方がいらっしゃったら、MAYにご一報下さいね。


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 MAY

 オカルト、悪魔信仰、猟奇事件、都市伝説を中心に、国内外で集めた不思議で怖い話を紹介しています。


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 この記事を書いた人

 MAY


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 タグ

 子取り / 人攫い / 妖怪 /逢魔ヶ時 / 隠れんぼ


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