第7話
あの後、街道巡回している馬に騎乗した何処ぞの領主の騎士だという輩達が現れましてね。身ぐるみ剥がされそうになりましたので馬ごと殲滅しました。
戦利品は馬肉です。だから、今回馬も殲滅対象に入れました。普段は見逃します。お肉に困ってませんでしたので。でも、最近供給過多になってしまったトカゲ肉に飽きてしまったのでちょうど良く経験値と肉がやって来たので狙ってましたところ、なんと相手が
さて、この先にその盗賊達の根城もとい街があるらしいです。どうしますかね?大量の経験値と物資を一気に手に入りますがリスクもあるんですよね。敵の数や地形、あと
とりあえず、今まで通りに相手から仕掛けて来るまで何もしない姿勢を維持しますか。これが1番楽です。それと私の地雷ワードを相手が口にするまで、も追加しておきましょう。
今日は馬刺しです。一応、お薬も用意しておきましょう。今世初の生食です。ぽんぽんぴーは嫌ですから。
sideサンドラ領主
「何?街道巡回任務に出掛けた第4騎士団の騎士達が帰って来ないだと?途中連絡はないのか?」
ぽっこりお腹を撫でながら「そろそろ痩せないとなぁ」と呑気に思考していた温厚そうな中年男の元にある知らせが。その知らせを受けた男、サンドラ領領主であるジョージ・サンドラ子爵は配下の第4騎士団団長に問いかけた。
「は、いつものように街の外へ数騎の騎馬と共に出発したこと。また、夕方の閉門時になっても帰還していないことに不審に思った門番から報告を受けてます。」
「今はもう夜半だぞ?巡回に行った騎士達は野営装備など当然装備して居らんだろう?大丈夫なのか?」
「一応、毛布や携行食などは携帯させてますので一晩であれば問題ありません。ですが、何か不足の事態に陥っている場合は一晩持たないかもしれませぬ。」
「夜半は獣や魔物が活発になるから捜索隊など出せば二次被害になるだろうな。今は隊を編成して早朝になってから捜索隊を出せ。無事に発見出来たら連絡しなかったことを理由に半年の減給処分にし謹慎させておけ。」
「寛大な処分、有り難き幸せです。」
「うるさい、さっさと編成を終わらせて寝ておけ!」
「は!失礼致します。」
「何事もなければ良いのだが、なんだか胸騒ぎがする。…やっぱり、明日からサラダを増やしてもらおう。」
side終
おはようございます。昨夜、今世初の生食であります馬刺しを食しました。最高でしたね。ぽんぽんぴーにもなりませんでした。物置スキルは時間経過無しのスペースがある収納スキルなのでいつでも美味しい馬刺しが食べれます。ふふふ。いつか飲酒が出来る年齢になったら楽しみたいですね。
私は街道沿いの野営地から街道に出て盗賊達の根城方向へ歩みを進めます。今日も美味しい馬肉を調達出来れば最高ですね。
気分が良いので何曲か歌いましょう。童謡をこの世界風にアレンジして歌うのも良さそうですね。例えば
「ある日〜森の中〜ハチさんに〜出会った〜♪」
とかクマさんだと猟奇的になりますし近くに居ませんし。
ハチさんでも一緒?友好的なハチさんだっているかもしれませんよ?異世界ですからきっといますよ。いない場合は…蜜と経験値をいただくだけですね。蜂の子が前世と同じくらいの大きさなら蜂の子食いに挑戦してみたいですね。大きかったから死んでもらいます。慈悲はありません。大きい虫で許せるのは成虫だけです。幼虫や芋虫には容赦しません。
前世の某有名殺虫剤のCMソングでも歌いましょうか。念の為です。
sideサンドラ子爵領騎士団街道巡回班捜索隊
昨日、街道巡回任務に従事していた数名の第4騎士団所属の騎士達が未帰還により領主命令で捜索隊を夜明け前に編成し終えた騎士団長は徹夜明けの顔をさせながら捜索隊に檄を飛ばし、ハイライトが若干消えた目をしながら送り出した。
ちなみに、家に帰ったら奥さんに残業の連絡をするのが遅れたことに対する説教が待ち受けている。奥さんに頭が上がらない騎士団長である。
憂鬱な午後を雑務で熟しながら、頭は奥さんの心象回復に何をしようかという悪あがきに等しい愚行の愚考でいっぱいであった。しかしそんな騎士団長に急を要する報告が参った。
「何?突如、街道にキラービーやデスビー等のビー種魔物が群れて溢れてるだと?」
「は、通常は捕食対象であるハニービーがいるにも関わらず徒党を組んで街道を往来していた商人達や捜索隊に襲いかかって被害を出しています。」
「一体何が起こってるんだ?」
数時間後
「緊急依頼を冒険者ギルド、傭兵ギルドに発行して蜂たちを殲滅する戦力を増やせ!」
「団長!人喰い蜂が街中に侵入して住民達を攫って行きました!」
「また攫われた住民を救出する為に働いた善良な冒険者数名が護衛蜂に群がられて瀕死の重体、後に人喰い蜂に連れ去られました。」
「善良な冒険者にはすまないが救出する手がない。住民達には絶対に何がなんでも屋外に出るなと伝えよ!」
「団長、スラムの住民はどうしまょう?」
「…税を納めていないスラム住民を我等には守る権限はない。だが、襲われてるようであれば助けよ。だが!決して深入りはするな!」
更に数時間後
「報告します。多くの冒険者、傭兵、衛兵、騎士、住民、商人の死傷者が出ました。大半は人喰い蜂に随伴していたデスビー、タイラントビー、デッドリーポイズンビーという奥地でしか遭遇し得ない危険種による被害が多いです。現在は夜半になったため夜目が効かないビー種達は撤退しています。今回、多くの普段は相入れることがない数十種類のビー種混合襲撃。原因不明。領内にいる魔物学者の安否確認をし次第に今回の魔物達の異常行動の原因を究明する依頼をすることが決定しました。」
「御苦労、短い時間だが休息を取れ。日が昇ったら奴らがまた襲撃してくる可能性があるだろう。暫くは警戒する必要がある。休める時に休もう。」
「は、それではお先に失礼します。」
「…妻が無事で良かったが、家のローンが残ってるのにどうすんだよ。」
今回、人喰い蜂等が家の中に閉じこもった住民を狩るために木造住宅を魔法等で破壊した被害が出た。家の地下にある貯蔵庫兼緊急避難シェルターがある家の住民は閉じこもったことで難を逃れたが上にあったはずの家は無惨にも柱を残しただけの倒壊寸前な廃墟と化していたケースがあった。
騎士団長とその奥さんの愛の巣と言えよう家にも地下室があったが結果は全壊。柱すら残っていなかった。唯一無事だったのは地下室に避難していた奥さんだけ。あと25年ローン。
魔物被害で家が全壊や半壊した場合の保健的なものは存在していない。ローンはきっちり払うしかない。
ちなみに、レンガ造りの建物は窓や扉以外は無事であったためこれからはレンガ造りの住宅が流行ることになるが騎士団長にはそんな財力は皆無。
「しばらくは嫁実家で暮らすことになるのか…胃が痛い。」
奥さんの実家はレンガ造りの住宅である。だが、騎士団長は奥さんの父親つまり義父が苦手である。
「騎士団長なのに給料が少ないことや、夜の営みが少ないことをチクチク言われそう…出来ればもう襲撃がないことを祈るしかない。これ以上はやってらんないぞ。ストレスで禿げるぞ。」
side終
私は今、夕陽が沈み薄暗くなり始めた時刻に野営場所を探しながら街道から離れて森の中を歩いていました。昼頃から遠くの方に黒い煙が上がっているのが見えていました。方角的におそらく、
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ
むむ、この特徴的な音は…巨大雀蜂ですかね?どうやら、めんどくさいのに囲まれてしまったようです。とりあえず、友好的かどうか確認しましょう。
「何か用ですか?」
ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴと轟音に近い羽音をさせる巨大蜂達。どうやら意思の疎通が出来ないタイプの害虫であるようだ。残念です。
「知性は無いようですね。残念ですが経験値になってくださいね。あ、蜂蜜があるならついでにもらっていきますね。」
巨大蜂達を経験値と認識した途端に視界の端から血なまぐさい臭気を漂わせる赤と黒の体色に、頭部には人型生物の頭蓋骨を思わせるような骨を被った巨大蜂が私目掛けて突進してきました。私はそれを氷魔法アイスウォールで受け止めるだけに留めます。
ガキンと氷壁からしてはならない音がしましたが巨大蜂程度の突進では割れないようです。氷壁で防いだのは姿勢を低くして回避しても追撃されたら面倒でしたし飛んで避けたとしても隙を見せることになりますから。それに虫って寒さに弱いはずなので。ここで私は終わらせることにします。
「それでは今日の演目を…虫と爬虫類には寒さを、選曲は"海を凍らせし女王の悲恋歌"」
海魔法で荒れ狂う海を心象再現させ、紡ぎだすのは1人の女の恋の歌。
最近、図鑑スキルが成長したのかこの世界の実話を元にした歌劇に関する情報が閲覧出来るようになりまして中々興味深い内容です。恐らくですが、王女ご一行様の生前の知識だと思います。
そうです。図鑑スキルは本来、知性があって知識を蓄えた生物を殺して知識を収集するスキルだと言うことです。かなりの無理ゲー仕様ですね。普通、知性があって知識を蓄えた生物というものは死なない方法と生き残る方法も当然の事ながら持ち合わせているため非常に殺しにくいのです。
例えば、普通の平民出身の冒険者が図鑑スキル保有者だとして教育を受けた貴族や商人を知識を奪うために殺そうとしても屈強な護衛を雇われていたら普通に詰みます。コツコツと経験や本などで知識を蓄えようとしても平民出身の冒険者では一生掛かっても大した量にもなりませんのでハズレスキルとなるんでしょうね。逆に教育を受けることが出来る貴族が手っ取り早く知識を得ようと戦争以外で他者を殺めるのは公式的には悪評でしかありませんので厄スキル扱いされて平民落ちするでしょうね。
ふむ、どちらも追放系主人公の条件になりますね?
そんなこんな考えている内に、悲恋歌は終幕に。セルフ拍手をすれば、氷漬けになった巨大蜂達が砕け散っていきます。最後には風に吹かれてきれいさっぱり。
ある程度、暗記した歌であれば意識せずに歌えますので余計なことを考えてしまうのが最近の癖です。良くない傾向ですね。少し集中しませんと。
巨大蜂に構っていたため空は完全に真っ暗になってしまいましたね。魔法の影響でぽっかりと空白地帯が出来たのでここらで今日は休みます。
剣舞士が歌えば災厄級!? 比較的汚れた紙片 @sihenwatabaneru
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