穂影
ナナシマイ
穂影
落ちる日に遠い日を見て藍尽くめ落とした声に
出ない芽をだれかが摘み取るはずもなく浪費していく空と土とを
光る文字「ごめん急用で」「また今度」わたしの愛をなんだというの
ペダル踏む当時の春に今ごろ気づく鳴らないベルでよかったわ
底を知れ笑みを貼りつけ這いつくばれ行きはよいよい下り坂
土俵に立つことすらできぬハリボテ平平凡凡吐き出してゆけ
ひとりで濡らした頬はひとりで拭うしかないのよハンカチください
白雲の遠いことはわかってる甘くはないともわかってるのよ
酩酊に空の青さを恨めども恨めども舟おりられぬから
「下手ですね」摘果の言葉を嘲笑うわたしは今も歌っている
煮詰めた偏屈かくし味はヒミツ薄めるなら返してちょうだい
夕立の足踏みよりも唐突に届くおタヨり便利でなにより
そら伝う見知らぬことばの質感にきみの居場所の気候をおもう
吐く息の空気よりも軽いことヘリウムみたいに夢見がちなら
雑草にも名前はある? 知ってるわ、それでも薔薇は美しいもの
光と闇の対決に投じる身もなく立ち尽くす鏡のなか
凍風に手指くぐらせタコのよう足りぬ三本探してきます
できるだけ多くのものを好きでいたい持てないほどに満ち足りていたい
今日もまた名もなき舞を踊ってる業突く張りな青の星団
旅に出よう黄ばむ頁の乗車券めくるめく心は魔女模様
穂影 ナナシマイ @nanashimai
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