短編「転生者である彼が言うには、この世界は終わるらしい」
みなしろゆう
「転生者である彼が言うには、この世界は終わるらしい」
「俺さ、転生者なんだ」
杯を傾けながら男は、唐突に言った。
「はぁ……?」
「ごめん、なんて説明したらいいか」
男の隣で蜂蜜酒を飲みながら──勇者、セレノア・ルフィンは、言われた意味が理解できず、ぽかんとした。
話があると言われたから酒場に来たが、どうやら冒頭から蹴躓いてしまったようだ。
「ちょっと、考える」
セレノアの反応を受け男は考え込んだ、と思ったら一息に酒を呷る。
空になった杯が雑に置かれた、セレノアは長年の相棒である男の「らしくない」様子に呆気にとられるしかなかった。
穏やかで酒が入るとすぐご機嫌な酔っ払いになる彼の、こんな顔は見たことがない。
難しい顔、何かに追い詰められているような、焦りを感じる表情。
戸惑ったセレノアは、なんて言ったら良いか分からず自分の杯へ視線を落とす。
──てんせい、転生か。
何だか聞いてはいけない話なんじゃないか、と思うのだけど。
相棒はどう話したものかと思案しているようだから、セレノアは待つことにする。
手持ち無沙汰になったセレノアは、無意識に傍へと右手を伸ばした。
指先は、立てかけられた剣の柄に触れる。
握るわけでもなく撫でる、自分にだけ馴染む業物の感触に安心した。
暇な時に愛剣を撫でる、それはセレノアに染み付いた癖の一つだ。
セレノアは勇者だから、この一振りだけであらゆるものを救って来た。
人も動物も、善悪も国も。
彼女の名を知らぬ者は、この世界にいない。
北の果てにあるコードという村に生まれ、女神より天啓を受けて勇者となり、相棒と共に旅立ち、王都シュテルンで聖剣を抜き。
行く先々で人々を救い歩いた末に、世界までも守った若き少女剣士。
魔王を倒した大英雄、それがセレノアだ。
セレノアが勇者であるなんて、外見だけでは誰も信じないだろう。
手に入れやすい旅装を使い込み、亜麻色の髪は肩の上で切り揃え、同じ色の瞳は大人しそうで、華美とは全く程遠い。
武器は愛剣のみで──装備を全て解いてしまえば普通の村娘にしか見えないはずだ。
セレノアが剣の、戦いの天才だなんて誰も思わない。
名乗りさえしなければ気付かれない、今だって酒場の隅で二人だけ。
王都を初めとした主要都市ならば一応、それなりに顔が通っているが此処は違う。
定住する民が極端に少なく、通過していく旅人と冒険者の為だけにある酒場。
勇者に気付く者はいない。
店主と客の冒険者たちは騒がしく話しているが、離れた席に二人はいた。
二人と他を喧騒が隔てている。
誰にも話を聞かれることはないだろう。
彼が意を決するには十分な状況だ。
他人には聞かれたくなくて、でもセレノアには聞いてほしいこと。
今から彼にされる話はもしかしたら──聞かないほうが良かったと思うような話だったりするんじゃないか。
相棒の横顔を観察しながら憶測を立て、暇を潰すセレノアはこのまま、ただお酒を飲んでお開きにならないかなと考える。
聞いてしまったら、日常が崩れるような予感がするのだ、彼女の中にある「勇者」の部分が告げている。
しかし、相棒は口を開いた。
言葉を選びながら、酒の力を借りてでもしなければならない話をする為に。
気が引ける、でもセレノアは黙って耳を傾ける。
どんな内容か想像もつかないが、力で解決できることなら良いな。
……戦うこと以外じゃ何の役にも立たないんだ、勇者なんて。
「生まれ変わりと言えば分かりやすいか、俺は別の世界で生きていたことがあるんだ。
この世界──ノートンセルとは違う場所で」
聞いてる途中で、はっと己から飛び出した呼吸音にセレノア自身が一番驚く。
こちらを見ている相棒は今、確かにノートンセルと言った。
セレノアはどうして、と疑問を口に出す。
「どうして、この世界の名前を知っているの?」
「……生まれ変わる直前に、聞いたんだ。
唯一神メセロネイアから。
あの女神のことは、お前も良く知っているだろう」
セレノアは何と返事をしたら良いか分からずに、言葉を詰まらせる。
女神メセロネイア、知りすぎるほどに知っている、セレノアを勇者にした存在だ。
そして、ノートンセル。
この世界の名称なんて、普通の人なら知らない、むしろ知ってはいけないこと。
天啓を受けたとき、セレノアは女神と話をした。
勇者になることを告げられ、世界の仕組みを理解すると共に知ったのだ。
──この世界の名はノートンセル、魔力と共に生き、人を育む大地。
女神はそれだけ言って、二度とセレノアの前には現れなかった。
十歳になったばかりの頃、運命が決定付けられた瞬間のことだから良く覚えている。
女神と邂逅したというのなら、相棒もセレノアと同じように天啓を授かり、運命を定められ生きてきたというのだろうか。
だとしたら、そんな不幸なことはないと、セレノアは思う。
「それだけじゃないんだ、セレノア。
聞いてほしい、俺は今よりずっと昔……「生まれてくる前」からノートンセルのことを知っていた」
「どういうこと?」
セレノアが聞き返すと、相棒は適した言葉が見つからないと頭を抱え込んだ。
飲み干してしまって酒の力を借りられない彼の代わりに、セレノアが蜂蜜酒を一口飲んで、渇いた喉を潤した。
──相棒が言うことはいつも正しくて的確で、未来が見えているように話す。
加えて難解だから、セレノアの彼に対する口癖はどういうこと?となんで?である。
セレノアが勇者になった日も、彼だけは驚いていなかった。
少し悲しそうな顔をしたあとに、旅について行くと彼は言って、二人きりで旅立って。
行く先々で彼の助言に助けられた。
セレノアは、世界を真に救ったのは自分ではなく彼の方だと思っている。
彼がいなければ救えなかったものが、未熟な勇者には沢山あったのだから。
「お前がいたから救えたんだ」と言って自分を評価しようとしない彼だけれど。
セレノアの相棒で幼馴染で、世界を共に救った仲間は、凄い人だと思われることを避けて生きているようだった。
「前の世界って?」
セレノアは迷いながらも言葉を探し、相棒へ更に問い掛けてみる。
たまには、どういうこと?となんで?以外の聞き方をすることにしたのだ。
続きを聞くことに本能的な恐怖を感じるが、彼の方がよほど怯えて見えた。
「ちきゅう、と呼ばれていた……世界というと変な感じがするけど。
俺は「にほん」という国で生まれ育った」
「にほん……」
聞いたことのない国、全く別の世界。
セレノアも「生まれ変わり」というのは知っている。
一般的ではないが確かにある考え方だ。
魂は死ぬと別の存在になってもう一度生まれ、それを繰り返す。
前世と今世、そして来世。
大抵のものが今世のことしか把握できないけれど、彼は前世を覚えていると言う。
セレノアは何となく、大雑把な理解をしながら、相棒の話を聞き続けた。
「昔の俺は、今よりもっとパッとしなくて。
同年代の子どもが集まって学問を学ぶって場所がにほんにはあるんだけど、そこでも浮いていてさ」
「ちょっと分かるよ、村でも貴方は子どもからも大人からも遠巻きにされていたし。
前世もそうだったってことでしょ?」
「言葉にされると傷付くな……」
相棒は苦笑いをしてセレノアを見た、見慣れた幼馴染の表情。
彼のことを大人びていると思う度、単純に歳上だからだろうと思っていたが。
それにしても老生しすぎだと感じることがあったから、別の人生を経験したことがあると言われた方が納得できる。
セレノアは杯に添えていた左手を、テーブルの上に置いた。
直ぐ横に相棒の右手があって、そういえば子どもの頃以来、繋いでいない手だった。
誰かとより剣と手を繋いで生きて来たし。
恋人でもないんだから当たり前だけど、とセレノアは関係のないことを考える。
その間にも話は進んだ。
「何だかんだあって死んだんだけど」
「端折ったね」
「長くなりすぎるから。
三十半ばくらいで病気になってさ、死んだ時の感覚はしっかり覚えているよ」
話は止まったり、再開したり、脱線したりを繰り返した。
相棒は時折、本当に伝わっているのかと確認してきて、セレノアは六割くらい分かっていると返し続けた。
相棒の前世はとても寂しいもので、呆気なく終わったらしい。
いてあげたかった、とセレノアは思う、何でかは分からない。
「病気で死んじゃって、それで生まれ変わることになったんだ?」
「ああ、女神と話をすることになって、今から俺はノートンセルという世界のコードという村の村長の三男坊に生まれるって」
「こまかいね」
「俺も同じことを言ったよ、そうしたら女神は入れる枠が他にないんだって言った。
……たぶん村長の三男坊は、本当は死産だったんじゃないかな」
寂しい話を、寂しい顔で、寂しくしている。
相棒の横顔を見上げながら、セレノアは今まで彼と過ごしてきた時間を思い返す。
幼児の頃からべったりくっついて来た幼馴染が、本当はいなかった。
たとえ一人きりでもセレノアは勇者になって魔王と戦うことになったのだろうが、その場合は正直、勝てなかったと思う。
セレノアは素直で正直な人間だから、思った事を口に出す。
「会えてよかった、私たち」
「俺もそう思うよ」
相棒は嬉しそうに笑って答えてくれた、それだけでセレノアはちょっとしあわせだ。
今日はこのまま気持ち良く、帰って寝ても良いくらい。
でも、本題はここからなんだろう。
セレノアは逃げ出したいと思った。
それほどまでに本能がこれ以上聞くなと言っている、聞いたら終わりだと。
そう分かっていても、逃げない。
地獄で耐えているような相棒を、置いていくわけには行かないから。
セレノアは勇者の顔になって、相棒が語る真実に挑む。
「生まれてくる前から、この世界を知っていた、っていうのはどういう意味?」
「そのままだよ、俺はにほんにいた頃から、ノートンセルを知っている」
「──ノートンセルとは、日本で作られたゲームの名前だ」
また意味分からない言葉が飛び出して来て、セレノアは瞬きをした。
「げーむ?」
「英雄譚とか歌劇とかあるだろう、それと同じような意味だと思ってほしい、俺の前世ではノートンセルは物語だったんだ」
「……現実じゃない、誰かが作ったお話ってこと?」
「そういうこと、セレノアも登場人物の一人、主人公だった。
俺はノートンセルの世界にどっぷり浸かった青春を過ごしたから、メセロネイアに会った瞬間にピンと来たんだ」
物語、誰かが作った世界。
自分も誰かが作った、物語の一部。
セレノアには、相棒の言っている意味が理解出来ない。
とてもじゃないが理解するわけにはいかない、したら最後だと危機感すら感じた。
だけれど、腑に落ちたこともある。
「だから、知っていたの。
この世界で何が起こるかも、魔王とどう戦えば良いのかも、全部」
セレノアの問いに、相棒は重たく頷いた。
未来を見ているみたいだ、と思っていた、世界を真に救ったのは彼だとすら思うほど。
それもそのはずで、相棒は……彼の中にいるセレノアの知らない誰かは、ノートンセルを物語として深く理解している存在。
言うなれば神と同等だ、世界を救う旅は彼と共にあったから成功した。
共にあらねば意味がない旅路だったのだ。
体の中から酒精が抜けて行く。
周囲の音が耳に入って来なくなって、二人きりみたいに静か、そんなわけないのに。
相棒は震える声で話を続ける。
勇者は聞いた、懺悔じみた告白を。
「転生者であることは、死ぬまで言わないつもりだった。
辛いことが起きる度に俺なら何とか出来たはずだって考えて……未来が分かるなんてバレたらどうなるのか怖かったから。
言わないでいれたら良いと思って生きて来たけど、そう言うわけにもいかなくてさ」
「俺は、これから先を知らない。
ノートンセルには、魔王を倒した後の物語は描かれていないんだ」
「この世界には、未来がない」
相棒の言葉は、まるで終末の予言だ。
セレノアは自分でも意外なくらい冷静に、彼が言った言葉の意味を理解した。
力では解決出来ない滅びが、ノートンセルにやって来るのだと。
セレノア・ルフィンは勇者だけど、魔王を倒して世界を救った英雄だけど、戦う以外の救い方は分からないし、知らない。
「魔王を倒すまで必死だったよ、知っている旅路でも、知らないことは沢山あった。
死にかけたことも想定外もあった、何よりお前に死んでほしくなかった」
「でもセレノアは、俺の知っているとおりに世界を救ってくれて。
本当に嬉しかったんだ、これでやっと平和になって、お前が普通に暮らしていけるんだと、なのに……」
「この世界には続きが用意されていない、魔王を倒した夜、女神は俺に言ったよ。
ノートンセルは完結した、滅びると」
──相棒が抱えていた地獄は、セレノアの想像よりも底無しだった。
彼が怯えるのも分かる、彼と同じ立場ならこんなこと、怖くて口にできないだろう。
でも彼は、話すことを選択した、耐えながら、怯えながら。
「お前にだけは、伝えなければと思った。
どれだけ残酷な真実でも、恐ろしくても俺の全部を話そうと決めた」
「勇者セレノアは魔王を倒した。
世界を救ったんだ、それを嘘にするわけにはいかない。
……この世界が滅びる時に、救えなかったと泣くお前なんて見たくない」
全て吐き出し終わっても、相棒の顔は晴れやかにはならなかった。
セレノアも、何にも言えなかった。
遠くの喧騒が止まないうちに、この話には決着をつけなければならない。
セレノアは他人事のように、辛いなと思う、なのに不思議だ──聞かなきゃよかったとは思わない。
運命というものがあるのだと知ったとき、あまりの悍ましさに震えて眠ったのを、セレノアは思い出す。
女神の指先一つで全てが定められる世界で、普通に生きることがどれだけ難しいか。
女神どうこうではなく、もっと外側にセレノアの運命を操る何かはいたようだけど。
セレノアから普通を奪った、残酷な神様は。
相棒は拳を握りしめている。
その横でセレノアの左手は脱力していた。
──この人は「ちきゃうのにほんじん」であると同時に、セレノアの幼馴染。
この結末に耐えられない、セレノアを幸せにしない世界に耐えられない、そんな人。
物語の主人公としてではなく、女の子としてのセレノアと、彼は付き合い過ぎたのだ。
誰よりも彼女が普通に生きたかったのを知っている。
祀り上げられて村を追い出されるように旅に出たことも。
何処に行っても誰も彼もに傅かれて対等に見てもらえなかったことも。
名乗ることすら怖がるようになったことも、この人は知っている。
だから彼は今、歯を食いしばって耐えているんだ。
セレノアは勇者だけど、なりたくてなった訳じゃない。
その事実がこんなにも彼を苦しめる。
セレノアは、深呼吸をした。
心境的にはかなり冷静で、する必要もないけど、隣に座る男と息を合わせる為にした。
呼吸が重なるほど、気持ちも重ねられたら良いのに、考えていること全部伝わってしまえと、そう祈るだけではダメだってセレノアは知っている。
セレノアは素直で正直な人間だから、思ったことは言わないと気が済まない。
体ごと相棒の方に向き直って、手を握ってあげる自由すら勇者は持たないけど。
相棒がしてくれたように、自分の全てを話そうと、彼女は決めた。
「生まれて来たのが間違いだったみたいな顔しないでよ。
理解しきれてるかは微妙だけど、聞けてよかったと思う」
「救えたんだって言って貰えてよかった。
私はちゃんと、勇者をやれていたんだね」
穏やかな笑顔を浮かべるセレノアを見るほどに、男の顔は歪んでいく。
どれほどの重圧が、彼女に乗っていたか。
どれだけ孤独で過酷な人生だったか。
知りもしないで救われて、勝手に滅びるこの世界が大嫌いだと男は思う。
かつてはあんなにも、自分の人生の一部になるくらい、大好きな物語だったのに。
──今では此方が現実で、この世界で呼吸をする度に自分のことを憎んで。
怒りと悲しみの間で、泣けもしない男にセレノアは言った。
「でも、滅びちゃうんだ」
「セレノア」
脱力している手を相棒は握る、彼女が触れたくても触れられないその手で。
吃驚してセレノアは握られた手を見た。
誰かを救うために手を差し伸べることはあっても、自分を助けようとする手に掴まれたのは初めてだ。
セレノアは勇者だから、縋る側にはなれないから。
手は強く繋ぎ止められている、何処かに行ってしまいそうにでも見えるのだろうか。
険しい顔をしている相棒と目を合わせながら、久しぶりに感じる誰かの体温に、セレノアは閉じた心から感情が溢れていくのを自覚した。
「勇者がこんなこと言ったらダメだけど。
どうにも出来ないことを退けるような万能さは、私には無いんだ」
「女神様が滅ぶって言ったのならそうなるってことも、知っている。
避けようがないこと、なんだよね」
──彼が言ってくれたように自分は、勇者としての役割を果たしたのだろう。
セレノアに出来ることはもう無いのだ。
物語は終わったから、この世界に勇者はもう要らない。
悲しくて悲しくてセレノアは耐えられそうもなかった。
だというのに、悲しみよりも大きく膨らんでいく感情がある。
留めきれず、押し出されるように、喉から言葉が湧いてくる。
「悲しいのは本当だけど、私ね。
こんなの怒られちゃうけど、もう守ってって、救えって言われないと思ったら……」
「安心しちゃった、ほんとに私って勇者に向いていないのね」
悲しくて辛くて堪らないのに、セレノアの心は安堵でいっぱいになっていった。
勇者として罪深すぎると、分かっていても止まらない。
自分の運命に終わりが来たと言われたような気がして、嬉しいと思ってしまう。
たまたま私が選ばれただけ、どうしてと思わなかったことはない。
そんな旅路の終着点が彼の隣であることが、セレノアは嬉しくてしょうがないのだ。
こんな状況にでもならなければ、運命はセレノアに勇者を辞めさせてくれなかった。
決壊しそうな感情は複雑で、胸が痛いのにあたたかい、なんて言ったら良いのだろう。
今のセレノアは悪いから、相棒のことしか考えられない。
「今まで戦って来て、たどり着いた先が此処なんだったら嬉しいよ。
滅ぶんだとしても嬉しい、ちゃんと出来たんだって言って貰えて、嬉しいの」
目を逸らさずにいる彼に、一生懸命に息を吸ってセレノアは子どものように語った。
「でも私、もう要らないって言われても、世界を救える方法を探しに行きたいと思う。
たとえ、そんなの見つからないとしても」
「だからまた、旅をしてほしい。
勇者じゃない、ただのセレノアと一緒に」
生まれて初めての願い事は、一人の人間に向かって囁くように告げられる。
「世界が滅びる瞬間まで、手を握っていて」
この世界に生まれた意味を探し続けていた彼は、己の命の理由を今知った。
──勇者でもない、主人公でもない、ただのお前に会うために、俺はこの世界にやってきたんだ。
互いに成長した手を繋いで、いつかみたいに相棒はセレノアの旅についていく。
一人の男は、ただの少女に笑って応えた。
「離せって言われても離さない」
残る時間がどれだけかも、いつ滅びるかも分からない世界で、二人は漸く始められる。
「一緒に生きて、一緒に死のう、セレノア」
求めた普通は、結末の向こう。
ハッピーエンドの先は、誰も知らない。
──セレノア・ルフィンは勇者だった。
彼女は魔王を倒し、世界を救い、相棒と共に旅をする。
記録にも残らない、小さな世界の物語だ。
短編「転生者である彼が言うには、この世界は終わるらしい」 みなしろゆう @Otosakiaki
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