第3話 野焼き

嫌われるとは恐ろしきこと家を呑み込む憎しみの火が

子供らを野焼きのように舐めていく「あれは林の、人殺しの子」


裁判で赤を着たがる女です同情を買う術も知らずに

毒婦という鋳型はふかく刻まれて流し込まれる有罪の鉄

民草たみくさの声は求むや、理不尽な死を償わせよと、理不尽な死で


ママ、ママ、とまとわりついてくる子らを感じたい手は、届かない手は

殴る手を振り払うため海へと落ちぬ真須美の孫と娘は


「シルエット・ロマンス」を聴いて涙する母でありたり林真須美は

毒婦とふ烙印深く刻まれて獄に朽ちるや四人の母は


(短歌の背景)

林夫妻が逮捕されても報道の熱は下がらず、残された四人の子らは施設においてもいじめや差別を受けたという。成人してからも肩身の狭い思いが続いた。また、長女は家庭生活が破綻したのち子供と一緒に投身自殺を図った。


不十分な証拠をもとにカレー事件の犯人とされた真須美は死刑囚となり、家族への面会も許されない。いつ死刑が執行されるかわからない状態で獄中から支援者と連絡をとり続けるが、再審はならずに25年が経過した。

「林家で見つかったヒ素と公園で見つかった紙コップのヒ素を同一とすることに無理がある」との専門家の説が公開されるなど、えん罪の匂いが濃い事件だが、真須美自身が同情を買いにくいタイプでもあり、社会的な動きにはつながっていない。


「人に嫌われたら罪を背負わなければいけないのか?」の疑問は消えない。「毒婦」「犯人に違いない」とのイメージを作ったのは警察とメディアであり、それを受け入れたのは大衆だ。

自分や家族がもし林家の立場だったら、どうだろうか。(終わり)

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和歌山カレー事件を知っていますか だいだい @Daidai55

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