タイトルからも想像できるとおり、ゆる~いダンジョン配信物。
しかしその設定は重くダーク。
読者が文体や進行のゆるさに慣れたころ、不意を衝くようにカタルシスが訪れる。
それはまるで突発的に発生する、MMORPGの大規模戦闘(レイド)のようだ。
そしてタイトルにもなっている『オカン』。
『オカン』はすべてを解決する。
だが『オカン』がすべてを解決するのは、よくないこと。
解決するのはあくまで息子である主人公でなければならない。
その線引きがきちんと成されているので、良識的で読みやすい物語となっている。
親というのは木にうえに立って見まもるものなのだ。
もっとも、実際に木のうえにいたのはバーサーカーな全裸お姉さんなのだが(爆
(詳しくは本編を読んで見てください!)
近頃カクヨムでも流行りの現代ダンジョン配信もの。ダンジョンが突如出現した現代社会を舞台に、ダンジョン探索の様子を動画配信する主人公があれやこれやでバズったりするというのが王道のパターンである。
本作の主人公タカシもダンジョン探索中に、ある特殊なスキルを手に入れたことをきっかけに急速にバズるのだが、そのスキルが『オカン乱入』というもの。配信中に母親が急に出現するという完全なネタスキルだが、タカシにとってこのスキルは特別な物だった。だって彼の母親は5年前に亡くなっていたのだから……。
これによって、数年ぶりに母親と再会したタカシ。一発ネタみたいな作品だと思っていたのに、しんみりさせるじゃないの……。だがこのスキルはこれだけでは終わらない。なんとタカシの母は異世界に転生しており、向こうの世界で凄腕の僧兵になっていたのだ!
かくして時間限定ながら最強の母を召喚できるようになったタカシは、もの珍しさもあって一気に人気配信者の道を進んでいく。母親とのダンジョン探索というメインのストーリーは変化球気味だが、その一方で配信視聴者との気軽なやり取りを繰り広げたり、ダンジョンでの活躍を通じてタカシが学校で人気になる過程が描かれたりするなど、ダンジョン配信ものの美味しいところをきっちりおさえられているのも嬉しい。
(「僕らはみんなバズりたい! 配信系特集!」4選/文=柿崎憲)
なんとなく読み始めたのですが、これはめっちゃ面白いです。
とりあえずサーバント召喚でオカンが来ちゃうところがもうヤバい。そしてそのオカンが強いこと。
地上にそんなにはいられないことがネックなのですが、それでも強い。
このままガリガリダンジョンの最深部とカクヨムのランキングトップを目指して欲しい。
この半年の中ではトップ5に入る傑作です。
[2023/09/03 追記]
一つ書き忘れました。これって現代ダンジョンものの体裁をとってはいますが、ダンジョン攻略は物語の縦軸で、本体は各々個性的な登場人物の群像物語だと思っています。
なんせそれぞれのキャラクターが個性的、特に狂子の設定が素晴らしい。
ついでに言うと、日本古来の神道とキリスト教系? の悪魔とのハイブリッドっていう点が新しいと思います。作者は神主なのか? と思うくらいよく調べていますね。
まさかここで『ひふみ祝詞』やら『権能』やらを見るとは思ってもいませんでした。ナイスです。
この調子で頑張ってください。
次、はよ。