第23話 泊まる時と涼子と元一の過去

メルは精神科病棟に移る事になった。

俺はその事を考え込みながら仏壇の戸を閉める。

それから外を見る。

果たして俺はどうするべきなのか。

メルを許すべきなのか、と思う。


「.....」


俺は考えながら襖を開けて閉めた。

それから水を飲む為に台所にやって来る。

そして水を飲んでいると.....スマホが震えた。

涼子からのメッセージが入っている。


「.....アイツ」


お花を生けてみた、と書かれている。

それは.....俺の好きな花だった。

どういう花かといえばポピーの花である。

何故そんなマイナーな花が好きかといえば。

簡単に言えば悠希が最後まで愛した花であったから。


「.....彼女が出来るってのは不思議なもんだな」


そんな事を呟きながら俺は勉強をする。

将来.....涼子助けたい。


いや。

違うか。

涼子の様な悩みを抱えている人を助けたい。

そういう信念で俺は.....勉強を始めた。

どんな勉強かといえば医学である。


より正確に言えば精神学である。

俺は発達障害ではない。

そして自閉症でもない。

だからこそ理解したいって思った。

多少なりとでも助けになれば、と思ったのだ。


「.....訳が分からないけど.....頑張るか」


俺はそんな事を呟きながら勉強を始める。

それから

1時間ぐらいが経過した時。

インターフォンが鳴った。

俺は、?、を浮かべながらドアを開ける。


そこに涼子が居た。

涼子は笑みを浮かべながら立っている。

俺は、どうした?涼子、と聞くと。


「.....あ、明日も休みだから」

「.....ああそうだな」

「だ、だから泊まりに来た」

「.....そうか.....は!?」

「え、えへへ。おとま.....りかい」


俺はボッと赤面する。

コイツは何を考えている!、と思いながら涼子に慌てる。

すると涼子は、い、今更慌てても仕方が無い、と言ってくる。

いや!?それにしても仮にも2人きり!


「.....おま.....」

「だ、ダメかな」

「いや.....良いけど。親に許可は貰ったのか」

「万事OK」

「.....そ.....ですか.....」


そして涼子が泊まる事になった。

因みに親父達に話すと。

万事OKという形になった。

誰か止めてくれ。



「な、何だかこうしていると夫婦みたい」

「.....ち、近くね?」

「ち、近いかな。.....私はそうは思わない」


涼子が俺の膝に乗って来る。

それから俺を見上げる。

あのな.....、と思うのだが。

でも可愛さに免じよう。


「.....な、何を勉強していたの」

「心理学」

「.....え?」

「.....お前と少しでも分かち合いたいから」


え.....、と目をパチクリしてからボッと赤面する涼子。

それからモジモジし始めた。

そ、そんな理由で、と言いながら。

その顔に、それ以外にもあるけどな、とも切り出す。

涼子は、?、を浮かべた。


「.....メル、マナさんの心理とかも知りたい」

「.....あ、相変わらず優しいね」

「俺にはもうこれしか出来ない」

「そ、そんな事ないけどな」


涼子は擦り寄って来る。

俺はその姿に、おいおい、と赤くなる。

すると俺の頬に片手を添えてきた。

それから笑みを浮かべる。


「わ、私は全力で応援する」

「そうか。.....有難うな」

「さ、流石は将来のお婿さん」

「おいコラ。恥ずかしいって」

「え、えへへ。.....えへへ」


その言い方が.....可愛い。

だから恥ずかしい、と告げると。

幾らでも言ってあげる、と笑顔になった涼子。

それから俺の額に自らの額を添えてくる。


「.....私は今が一番幸せ。.....貴方と一緒になら.....将来一緒に棺桶に入る時も。.....愛している」

「.....重いわ。話が」

「だ、だってそうでしょ。.....私達は人間。いつかは死ぬ。.....だけど私はそれすらも恐れない。.....貴方と一緒だから」


涼子はそう話しながら柔和な表情を見せる。

俺はその姿に苦笑する。

でもそれは確かにな。


俺もそれには同感である。

将来どんな形になろうとも.....俺は涼子を愛しているだろう。

思っていると涼子は俺の膝下で寝た。


「.....な、何て幸せなんだろう。私」

「お前なぁ。恥ずかしいんだが」

「わ、私はちっとも恥ずかしくない。.....私は.....貴方に最大の愛を届けたいから」

「.....」

「め、メルさんの事も幸せにしたい.....色々あったけどね」


優しすぎる。

思いながら俺は苦笑いを浮かべる。

すると涼子は笑顔を浮かべながら俺を見てきた。

そして俺の膝下から起き上がってから俺の頬に手を添えてくる。

それからキスを交わした。


「.....」

「.....え、えへ」

「.....キスばっかりだな」

「.....そ、そうだね。そう」


涼子は唇を離しながら俺の胸元に擦り寄る。

そして、じ、実はね。.....最近.....思う事があるの、切り出す。

俺は、?、を浮かべて見つめる。

それは何だ、と聞きながら。


「.....長谷川知子(はせがわともこ)を覚えてる?」

「.....その名前は出すな」

「.....うん。だけど.....」

「ダメだ。アイツは.....あのゴミクズはこの世から抹消されるべきだしな」


長谷川知子。

涼子を障害の意味で虐めていた中でも。

中学時代で最も恨みのあるクソ野郎の女子生徒。


正直言って。

メル以上のクソとゴミの野郎であると言える。

今でもぶっ殺したくなるが.....何処で何をしているかはもう分からないが。

涼子にトイレの水を飲ませたボケナス。

正直生涯に渡って許さない。


「.....う、うん。貴方が言うならもう話さない様にする。ちょっと気になった事があったけど.....考えても無駄だね確かに」


言いながら涼子はゆっくり俺の膝下で横になった。

そして俺を、にへら、としながら見上げる様に見てくる。

俺はその顔を.....不安定な顔で見た。

いつまでもこの笑顔を守りたい。

だけどその中で思った。


何故今ソイツの名前が涼子の口から出てくるのだろうか。


その様に。

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彼女は浮気している可能性があり俺の幼馴染を貶した可能性がある。俺は彼女を捨てる事にしたのだが..... アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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