金玉とう

 昔々のお話です。


 女房とドジョウを捕りに行くのが日課になった十兵衛さん。

 ある日、女房にお使いを頼まれた。


「ちょっとあんた、善三郎さんのところに行って金玉きんたまとう持って来て」

「なんだって? き、金玉きんたまとう? そりゃ、ど、どういうもんだ?」


「どういうって? あんた知らないの? 甘くて美味しんだよ。あたしゃ、下品だけどさ、ちょっと舐めてから味わうね」


「舐めるって…… まさか、おめぇ。善三郎の……なにを?」

「だから、金玉きんたまとうだよ。ぶつぶつ言ってないで、はやく行きな」


 女房にそう言われ、十兵衛さんは顔を真っ赤にして善三郎の家に向かう。


「やいやい、善三郎! おめぇ、鶴に金玉きんたまとう食わせやがったな‼ 人の女房に手を出すとは、とんでもねぇやろうだ!」


 すると善三郎さん、呆れた顔でこう言った。

「十兵衛さん、それは、金玉糖きんたまとうじゃなくて金玉糖きんぎょくとうという和菓子ですよ。いつも言い間違えて、お鶴さんにも困ったもんだ」


「……」


 とっぴんぱらりのぷぅ

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今宵は艶話。 月猫 @tukitohositoneko

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