追放されたい転生者VS追放したくない少女たち

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第1話

 前世で読んだことのあるライトノベルの世界に転生した。


 ジークハルトがそう感じたのは5歳になった時に受けた鑑定の儀。そこで授かったスキルを見た時だった。


 彼の授かったスキルは付与魔法。この世界の常識だと、使い道の限られている外れスキルという認識だ。


 冒険者を志望するには物足りないスキルであった。

 そこでジークは思い出したのだ。


 冒険者になった主人公がこのスキルが原因でパーティを追放され、その後にスキルの本当の強さに気づきハーレムを作ることを。


 異世界に転生したのであればハーレムは作りたい。

 そう考えていたジークにとってはこれは望んでいたスキルと言っても過言ではなかった。


 転生した物語が分かった後は冒険者になり、パーティから追放されるだけ。

 そう考えたジークは理想を叶えるために血の滲むような努力を積み重ねていった。


 同じ村に住む少年達が野山を駆け、遊んでいる時でも前世のラノベやゲームの知識を元に独学で訓練をしていた。


 寝取られモノは好きではないジークはいつも絡んでくる幼馴染の少女を無視しながら努力を重ねていった。


 ジークがこの世界に転生してから15年もの月日が経ち村を出た。

 無事、冒険者になることが出来たジークはとあるパーティに参加することが出来た。


 中性的なイケメンであるパーティリーダーを筆頭に美少女三人という顔面偏差値が高すぎるパーティ。

 追放されるならこのパーティしかないとジークは感じていた。


 トワイライト。それがジークの所属するパーティの名前であり、ジークの加入から僅か一年でその名を世間に轟かせる新進気鋭のパーティである。


 未だ誰も攻略していないA級ダンジョン冥府の門ヘルゲート

 トワイライトは明日ついにそのダンジョンの下層ボスへと挑戦する予定であった。


「ふーん♪ふふーん♪」


 鼻歌を口ずさみながら途轍もない色をした液体の入った鍋をかき混ぜる。


 クランハウスで作業している少年、ジークハルトはとても機嫌が良かった。


 ジークは最近ジークを除いたパーティメンバーの様子が慌ただしくなっていいることを理解していた。

 おそらく自身が追放された後の追加の人員を探しているに違いない。慌ただしさの理由をそう考えていた。


 この探索が終わった後に追放を告げられた時にはどんな顔をしようか。怒れば良いのか、それとも泣いてすがった方が良いのか。考えれば考えるほど笑みが止まらなかった。


「完成っと」


 集中をしていなくてもこの程度なら慣れたモノであるジークは失敗などするはずがなかった。


 鍋に入っていた液体を小瓶へと移し替える。作業が始まる前にはなみなみと鍋に注がれていた液体も完成する頃には小瓶5つに収まる量になっていた。


 ジークが作っていた物。それは劣化版エリクサーと呼ばれる魔法薬だ。


 飲んでしまえば寿命が伸び、一瞬で四肢欠損すら回復し、どんな病気も治してしまうと伝えられている伝説の魔法薬である。


 難関ダンジョンの最下層から極稀にドロップすることがあり、それがドロップした時にはオークションが開催され小国一年分の国家予算並みの金額が動くといわれている。


 ジークが作っているのはその劣化版である。劣化版故に寿命は伸びず、四肢欠損を治すのにも時間がかかってしまう代物だ。


 だが、仮に劣化版とはいえそんな物を作れる者が存在すればその人物を巡って国同士の戦争が起こってもおかしくはないだろう。だがジークはそれを理解していなかった。


 ジークからすれば劣化版エリクサーなど材料さえ揃っていればいくらでも作れる物でしかなく、材料もそこまで揃わない物でもない。


 さらにエリクサーという存在が物語やゲームとはいえ身近な存在でをあった世界から転生をしていたため、価値観がおかしくなっていた。


 ジークが先日パーティ内でお披露目した際には誰も驚愕の声を上げなかった。そのため、その程度の代物でしかないと考えていた。


 実際は声を上げることすら出来なかったが正解なのだが、ジークだけがそれを理解していなかった。


 作り終えたえ劣化版エリクサーを自身が制作したマジックバックへと収納する。

 明日から探索する物資の準備を終えたジークは晩御飯を作りに厨房へと向かった。


 厨房で料理の準備に取り掛かる。今日のメニューはロックバードの唐揚げである。ロックバードは冥府の門中階層で出現する魔物だ。


 お手製の魔道コンロを使い油の温度を上げていく。その間に自家製の醬油を使用し肉に味をつけていく。丁度いい温度になった油へ肉を投入していく。


 唐揚げを揚げている間に今朝市場を見て厳選してきた野菜でサラダを作っていく。お手製のドレッシングを作ることも忘れない。


 日が暮れ始めた頃には料理も完成していた。いい匂いに釣られたのかパーティメンバーも顔を出し始めていた。

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