手遅れの始まり
そいつは異常者だった
今すぐ隔離し
然るべき施設へと収監すべきだった
その意見は絶対的に正しかった
他の皆と同じ空気を吸わせてはいけないのだ
そして最も重要な問題はその異常者が他の誰でもなくこのおれ自身だということだ
死ぬまで生きればそれで良い
だがそれまでが長すぎる
おれは最初から間違えていた
その間違いを起点にし物事は展開された
正解を選び取るのは困難だった
自分の内側ですら味方ではないのだ
その後始末をするのもおれ
何かがおかしい
状況は更なる悪化を辿る
人生を丸めて屑籠へと放り込むべきなのかもしれなかった
それを躊躇う理由も無いように思える
神様がもし本当にいるのなら何とかしてくれるかもしれない
けれど期待は出来ないな
もう概念ごと消し飛んでくれ
真実は強固でけして揺らぐことはない
おれは錠剤を飲み干し誤魔化すしかなかった
何もかもを曖昧にして
この世界で生きることもそれほど悪くないと勘違いしながら
先送りにした代償が
やがてとんでもない規模になって襲い掛かって来ることを察知し
短編小説集 雨矢健太郎 @tkmdajgtma
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