貴方が今日、いなくなってしまっても私は───

真くんが刺された。

私──朝雛陽香は、真くんの付き添いとして救急車に乗っている。

真くんのお腹からは血が止まる事なくながれており、救急隊員の人が必死に応急処置を行っている所だ。

私は、そんな真くんの手を握って必死に願っている。

「真くん──── 」

真くんは、息が荒く目を閉じている。

私はそんな真くんの手を握る事しか出来ない事が悔しくてしょうがない。

そんな無力感に打ちひしがれている時、真くんの目が少し開いて、

「陽香……愛してるよ──── 」

と言って再び目を閉じてしまった。

「うん!私も愛してる!…だから…だから、生きてよ!」

そんな事を言っても真くんの返事は返ってこない。

すると、急に救急隊員が焦り出した。

「心拍数!急速に低下しています!」

「体温もどんどん下がってます!」

「出血が更に酷くなりました!」

そして、とうとう…

「血液!足りません!」

「まずいです!このままでは出血多量死してしまいます!」

などとしていると、ピー!という音が鳴った。

「………心拍数、0、、になり、、ました、、、、」

……嘘だ………真くんが…死んだ?

すると、急激に目の前が真っ暗になり、そのまま意識を失った。

次に目を覚ました時、そこは病院だった。隣では母が眠っている。

そして起き上がろうとすると、医者が中に入ってきた。

私は、医者から説明を受けたのだが、真くんが死んでしまった事で頭が一杯で、それからの事はよく覚えていない。

私はフラフラとした足取りで、自分の家へと向かう。

その日の空は雲が多くて月の見えない夜だった。

それからの日々は、ただボーっと過ごしていた。すると、気づけば真くんのお葬式を迎えていた。

私は呆然としながら、真くんのご両親の元へと向かった。

するとやはり、2人は泣いていた。そんな2人に私は謝る。

「真くんのことは本当に申し訳ございませんでした」

すると、真くんのお母さんが、

「…いえ、陽香さんは悪くないわ。それにね、うちの息子は陽香さんを助けたくて、命を張ったの。今はまだ辛いと思うけれど、このお葬式が終わったら息子に囚われないでね」

……分かっている、けど、、、、しばらくは無理そうだった。

すると、今度はお父さんが、

「陽香さん、これを…」

そう言って受け取ったものは、中に何かが入っている封筒だった。

「これは……?」

「生前、真が陽香さんに向けて書いていた手紙だ。…もし、自分に何かあったとき、陽香さんに渡してほしいと言っていた」

「…ありがとうございます」

それから、お葬式が終わり、気付いたら家にいた。

隣では、母が心配そうに何かを話している。

私は、母に外に少し出てくると断って、外に出た。

行き先や目的なんて無い。ただひたすらにこのやりようの無い思いをどうにかする為に。

それからしばらく歩くと、雨が降ってきた。

だけど、私は気にせずにただひたすらに歩き続ける。すると、ここらではかなり大きい河川に辿り着いた。

川に近づき、私は呟く。

「……真くんのいない世界なんて、、、、、」

そう言って、私は身を投げようとする。けど、寸前で真くんのお母さんの声がフラッシュバックする。

『うちの息子は陽香さんを助けたくて、命を張ったの──── 』

そこで私は思い留まる。そうだ、真くんが命をかけて守ってくれたのに、こんな簡単にそれを捨てようとするのは、真くんに対しての侮辱では無いだろうか。

そして私はふと、真くんからの封筒のことを思い出した。それから急いでポケットを探し始める。

「確か今持ってたはず………あった!」

そして私は、その封筒を開ける。

すると、中には便箋と、普段真くんがつけている首飾りが入っていた。

「これ………」

私は、便箋を読んでみる。


────────────────────────────────────



 さて、この手紙を読んでいるという事は、僕は既に亡くなっているのかな?

この手紙には、陽香に伝えてたいことが3つ書いてある。良かったら、最後まで読んでね。

 じゃあ、まず一つ目に伝えたいことは、ズバリ!周りの人達に感謝を常にしていって欲しい。僕はこれが出来なくて後悔しているから、陽香には叶えてほしい。

 二つ目は、自分の命を大切にして欲しい。世の中には、僕みたいに生きたくても生きれない人がいる。だからこそ、陽香には生きて欲しい。くれぐれも自殺なんてしないこと!

 最後は、あまり僕の事を引きずらないで欲しい。僕のことを思ってくれるのは嬉しいけれど、それで陽香がいつまでも前を向けないのは僕も不本意だからね。

というわけで、この手紙を読んで、少しでも前を向くことに繋がったなら幸いです。これからの陽香の幸せを心より祈っています。

月宮真



────────────────────────────────────



「──── っ」

私はこの手紙を読んで、どこか胸があたたかくなっていくのを感じた。

そして私は首に真くんの首飾りをつけて、便箋をポケットにしまい、家に向かって駆け出す。


あなたが今日、いなくなってしまっても私は──── 前を向いて生きて行こうと思う。

だからさ、見守っててよ!真くん。いつか私が人生を全うして、真くんの所に向かうまで…


気づけば雨は止んでいて、雲一つ無い青空が広がっていた────

────────────────────────────────────


ここまでお読み頂きありがとうございます。清野天睛です。

この作品を読んで、皆さまはどう思われたでしょうか?

ぜひ、レビューなどに感想を書いて頂けると嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

余命一日 (旧題:今日、僕の命が終わってしまっても───) 清野天睛 @oukabannrai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画