余命一日 (旧題:今日、僕の命が終わってしまっても───)

清野天睛

今日、僕の命が終わってしまっても───

「残念ながら、貴方の余命はあと1日です」

そんな事を医者にいきなり言われた、僕──月宮真は、非常に混乱していた。

「…余命1日?それは本当なんですか!?」

「落ち着いて聞いて下さい、月宮さん、貴方は生まれつき、難病を患っていました。そして昨日、その難病が急激に悪化してしまい、貴方は倒れたのです」

「…そういう事ですか……因みに治したりは出来ないんですか?」

「ほぼ不可能でしょう。全身の細胞がもう、修復出来ないレベルでボロボロです。今、普通に動けるのが不思議なくらいです。」

「…そうですか」

「ですから、最期の1日を悔いが残らない様に良く考えて過ごして下さい。」

「…分かりました」

それから、僕はとりあえず家に帰った。すると、両親と僕の彼女───朝雛陽香が出迎えてくれた。

「真くん!大丈夫!?病院で何て言われたの?」

僕は彼女の言葉を聞いて、出来るだけ明るい声で言った。そうじゃ無いと、つらくて泣いてしまいそうだったから。

「余命1日だってさ」

「……え?」

すると、今度は母さんが聞いてきた

「そんな…余命1日だなんて……悪い冗談よね?」

続いて父さんも、

「そうだ、そうだ…何かの間違いに決まっている!」

と言ってきたが僕は、

「冗談じゃないよ。冗談だったらどれだけ良かったか……」

そう言うと、3人は泣き崩れた。

「なんで…なんで……どうして、、真くんがこんな目に遭わなきゃいけないの…?」

そんなの、僕が聞きたいくらいだよ…

でも、僕はその言葉をグッと抑え込んで、

「…そういう運命だと、割り切るしかないよ」

と言った。

「なんで…なんで真くんはそんなに笑顔でいられるの!?怖く無いの…?明日死ぬかもしれないんだよ!?」

僕は、自分の胸の中でわき上がるどうしようも無い気持ちを押し殺して、精一杯の笑顔で、

「僕だって怖いよ。でもさ、最期の日くらい常に笑顔でいたいよ」

「───ッ」

「だからさ、陽香。陽香も出来るだけ笑っていてよ…」

「………分かったよ。」

「ありがとう」

すると、父さんが口を開く。

「真、お前は今日という最期の日をどう過ごしたい?」

「僕は…陽香との想い出巡りをする事にするよ。これまでの想い出を振り返りたい」

「…そうか、なら今すぐ準備しなさい。お金は父さんたちが全て払うから、いくらでも行ってきなさい」

「ありがとう」

「お前は父さんたちの子供なんだから当たり前だ、心配せずとも、陽香さんの分も出す」

「…ありがとうございます」

すると、今度は母さんが口を開いた。

「陽香さん、最期までうちの息子をよろしくね…」

「はい、任せてください」

そうして、僕と陽香は出かける準備をして、駅へと向かった

「ところでさ…真くん、最初はどこに行くの?」

「最初は、陽香との初デートの場所だよ」

「…前ヶ原公園?」

「そう、そこだよ」

「…最近あんまり行って無かったもんね」

そうして僕らは前ヶ原公園へと向かう。

「…着いたね」

「…だね」

そんな事を言いながら、僕らは思い出の展望台へと向かった。

「…凄い懐かしいね」

「うん、ここで真君が告白してくれたんだよね…」

「うん、あの時は本当に緊張したなぁ」

「あはは、でも、嬉しかったよ?」

「なら、緊張した甲斐があったよ」

「ところで、次はどこに行くの?」

「…水族館かな」

「水族館…って事は…」

「僕らがデートしているところをクラスメイトに見つかった場所だね」

「あー…あの時はなんか気まずかったよね…」

「でも、今となってはいい思い出だけどね」

「うん!じゃあ、早速向かおうよ!」

そう言って彼女は僕を急かす。そうして、僕らは水族館に向かった。

それから水族館に着くと、僕らは早速チケットを買って入場する。

「どこ見に行こうか?ココで1日過ごす訳にはいかないし…」

「…私、イルカショー見に行きたい!」

「そういえば、あの時もイルカショー見たんだっけ?」

「そうそう!だからさ、今回も行こ!」

「いいよー」

そうして、僕らはイルカショーの会場へ向かった。

ショーに着くと、僕らは空いてる席に座り、ショーの始まりを待ちながら、僕らはあの日の思い出について語り合う。

「そういえばさー、あの時、僕ら最前列に座って、イルカに水かけられてびしょびしょにならなかったっけ?」

「あーそういえばそうかもね…」

「今考えると、よくあの後風邪引かなかったよね…」

「確かにね…」

なんて話していると、イルカショーが始まった。

ショーは前見た時とほとんど同じで、僕は、懐かしくてしょうがなかった。

…こんなに楽しい日々も、今日で最期か……僕は何か彼女にしてあげられただろうか?

なんて事を考えていると、気づいたらショーは終わっていた。

「あ、終わったね…」

「そうだね…次はどこに行く?」

「えーっと…私は遊園地かなぁ」

「お、あの遊園地?いいね!じゃあ早速行こう…けど、その前にコンビニにでも寄って行かない?」

「いいよー」

「ありがと、丁度喉が渇いてたんだよね…」

という事で、僕らはコンビニへと向かう。

中に入ると、僕らは飲み物コーナーに向かい、飲み物を選ぶ。

「何が良いかな?」

「私、紅茶にしようかな」

なんて話していると、突然、レジの方向から悲鳴が聞こえてきた。

「何だ!?」

「何だろうね…?」

僕らは、物陰に隠れながらレジの様子を見てみる。

すると、体つきのいい男がナイフを振り回して、金を出せと叫んでいた。

どうやら強盗に出会ってしまったらしい。僕らは強盗にバレないように静かに隠れようとした。

が、その時、陽香が足を引っ掛けて転んでしまった。

「何だ!」

しまった、強盗がこちらに気付いてしまったらしい。

僕は、陽香を後ろに庇いながら、強盗と対峙した。

「お、そこの女、顔がいいじゃねえか、彼氏が殺されたくなければこっちにこい!」

陽香は、後ろで震えている。僕は彼女を庇いながら、

「断る。お前みたいなゲス野郎に陽香は渡さない!」

すると、激昂した強盗が、こちらにナイフを構えて走ってきた。

僕は冷静にその手を蹴り上げる。すると、ナイフが少し離れた場所に落ちる。

「クソガキ!」

今度は殴りかかってきた。が、僕は今度はその勢いを利用して投げ飛ばす。

「ぐがっ」

そのまま押さえ込むために追撃をかけようと近づくと、いきなり相手が立ち上がり、ポケットに隠していたナイフを僕に突き刺してきた。

グサッ────

「────ッ」

お腹に激痛が走る。僕は、相手に凶器を近づけさせない為に出血多量死を覚悟してナイフをお腹から抜いて遠くへ投げ捨てる。

そして今出せるありったけの力を込めて相手を柔道の寝技で抑えつける。だが、当然ながら相手も抵抗してきて出血がさらに広がるが、そんな事は気にしない。

元より今日までしか生きられない人間だ。最後くらい誰かの為になりたい。そう思いながら僕は抑えつける力を強める。

それから少しすると、サイレンの音が聞こえてきて警察が突入してくる。そして強盗を捕まえるのを見届けると、陽香が僕を抱き抱える。

陽香が無事だったことを確認すると、安心して意識を失いそうになる。だけど多分この出血量だ、僕は多分ここで死ぬ。そう思った僕は最後に、

「陽香……愛してるよ──── 」

そう告げて僕は意識を完全に失った────


────────────────────────────────────



次の話で完結です

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