第2話気まずさ

テストは散々だった。欠点が3つ。僕は愚痴を言うためにあの丘に行った。

 丘には黒髪の先客がいた。希だ。僕は名前を呼ぶ。


「希!」


「あっ、準。きてたんだ。」


「どうした?」


「テストの点が悪くてさー。」


「悪いって言っても僕よりは絶対いいやろ!」


「一応どうだった?」


「欠点3つ!!」


「流石にそこまで悪くはない」


希は笑った。彼女の笑顔は本当に可愛い。


「ならいいじゃん」


「そうじゃないのよ。進学にも関わってくるんだから!」


「本当に真面目だな」


僕はそんなことしか返せない。


もっといいことは言えないのか?

自分に問う。

彼女は何も返さない。

僕も何も返さない。

本当に気まずい時間が流れる。

たまらなくなって僕は口を開く。


「最近学校どう?」


あまりにも普通だ。面白くない質問だ。自分に呆れる。


「どうもって、楽しいよ。そっちはどうなの?」


「楽しいよ」


「そうなんだ」


あまりにも短い。どうしようもない。本当に気まずい。

 希がしびれを切らしたのだろうか、


「帰るね」


「そう」


僕はこれしか伝えられない。本当にどうしようもない。

 もっと昔のように話せたらいいのに…。



**********************


テストの結果はあまり良くなかった。親から怒られるかもしれない。


「希!テストどうだった?」


志歩だ。


「全然だよ。いつもより悪い」


「悪いと言っても私よりはいいでしょ!」


「まあ」


「ならいいじゃん」


どこがいい。志歩は本当仲の良い友達だけど少し楽観主義者だ。私を少し気遣ってくれればいいのに。高望みか。もしかしたらじゅんなら少しでも聞いてくれるかもしれない。行ってみよう、あの丘に。

 丘に着いた。誰もいない。海を見てみる。海はキラキラと輝いている。これが私の心を癒してくれる。


「希!」


後ろから声を掛けられた。準の声だ。


「準。きてたんだ」


「どうした?」


きた!これはテストについて相談するチャンスかもしれない。思い切って言ってみる。


「テストの点が悪くてさー」


「点が悪いといっても僕よりはいいだろ」


やっぱそうか。期待した私が馬鹿だった。少しの望みをかけて聞いてみる。


「一応どうだった?」


「欠点3つ!!」


誇って言えることじゃない。だけど面白い。彼らしい。


「そこまで悪くない」


私は思わず笑ってしまった。


「ならいいじゃん」


「そうじゃないのよ。進学にも関わってくるんだから!」


「ならいいじゃん」


これで会話は終わった。気まずい空気が流れる。

 

「最近学校はどうなの?」


準が聞いてきた。なんで普通だ!彼に呆れるとともに少し面白い。彼なりにこの空気を打破しようとしているのだろう。


「どうもって、楽しいよ。そっちはどうなの?」


「楽しいよ」


「そうなんだ」


彼らしい答えだ。準にバレないように笑う。

スッキリした。よし、帰ろう。


「帰るね」


「そう」


彼はそれしか返さない。別にそれだけでもいい。

 帰ってテストのやり直しでもしよう。吹っ切れた顔で私は帰った。







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いつもの丘の上で… NENIKIO @nenikio_783

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