異虫(いちゅう)

 自分の肉体内、精神内、生活圏内、とにかく『内』に異質な代物が潜む。その不気味な感覚は、まさに『虫』だろう。

 かの芥川龍之介が手にした『酒虫』さながらに、本作の虫……カエル女……は怪異と重しを同時に兼ねる存在であった。すなわち主人公達の人生を安定せしめる重しである。

 正体の不明瞭な不気味を追い払うと、正体の明瞭な不穏がやってくる。これもまた、まごうことなき恐怖であろう。

 必読本作。