第4話 三日目 後半
「ずいぶん寝ていたね」
膝枕をしている。
「可愛い寝顔だったよ!」
「え。恥ずかしい?」
「ふふ。そんな顔も好き、だよ……?」
「いいじゃない。え。照れている? わたしが?」
「もう。バカァ……」
「ひ、膝がしびれてきたから、降りて」
「な、何よ。その顔。わたしだって恥ずかしいんだからね!」
「でも、わたし本気で好きになっちゃったんだから。キミのこと」
「なに、顔をまっ赤にして。ふふふ。わっかりやすいなー」
「え。わ、わたしも赤くなっているの? うぅ。ハズい」
「もう、そんなことを言うキミにはアーク・レイだぞ」
「説明しよう。アーク・レイとは全てのものを滅ぼすビーム攻撃魔法である!」
「え。いいじゃん。こういうのは雰囲気なんだから!」
「怒っている顔も可愛いでしょ?」
「あー。言っちゃいけないこと、言った!」
「もう、本気で怒った。今日の夕食はカップ麺ね!」
「もうもう! 身体に悪いじゃん! それで満足しないでよ!」
「まったく、キミという人は」
「そう、ちゃんと謝ればいいのよ。わかった?」
「分かったならよし。じゃあ、今日の夕食はビーフストロガノフにするね!」
「え。なんで? って響きが格好いいじゃんか!」
「ガノンド〇フみたいじゃん」
「敵が好きなの、って闇抱えている子が改心するのがいいじゃん」
「ま、ガ〇ンは改心しないけどねー」
「まあ、これから作るから、大人しくしてて」
「ふふ。可愛い」
「わわ、なんでもない」
「じゃあ、頑張るね♡」
調理する音。
「もう、なに? つまみ食いにでも来たの?」
「え。キミと一緒にいたい?」
「も、もう。ハズいこと言わないの」
調理する音。
「ふふ。だいぶ出来てきたよ。お皿用意して」
「盛り付け、任せてもいい?」
「良かったっ! 一緒に作った感があっていいよねっ!」
「ふふ。いい感じ♪」
「さ。一緒に食べよっ!」
「ほら。零している」
タオルで拭く音。
「もう、子どもみたいっ♪」
「ええ。じゃあ、ちゃんとしてよ」
「さ。片付けよ?」
「一緒にしようよっ」
「ん。いいじゃない。甘えたって。恋人なんでしょ?」
「ふふ。良い答えだねっ! 我が半身!」
「なんだか男の子って感じがしていいねっ!」
「かっこいいよっ! もう、我が盟約に従う者よっ。やはりかっこいい~っ!」
「もう、照れている姿は可愛いなぁ~」
肩をポンポンと叩く音。
「皿洗い終わったねっ♪ じゃあ、ゲームでもしよっか?」
「え。わたしも負けないよっ!」
ゲームの音。
「ああっ! ずるい! もう全然勝てないじゃん!」
「むむむ。このゲームきらい!」
「気分転換にお茶にしよ!」
お茶を煎れる音。
「さ。お菓子も用意したよ~」
ごくごくとお茶を飲む音。
バリバリと菓子を頬張る音。
「ん~♪ おいしいっ!」
「キミは何が好きなんかな? チョコ、せんべい?」
「ふふ。わたしも好きっ♪」
「もちろん、キミのことも、だよっ」
耳元で囁くような声。
「ふふ。かわいい♪」
「きゃ、転んじゃった。ハッ。もしかしてなんらかの魔術的謀略!?」
「ふふ。テンションが上がると中二心がくすぐられるよっ!」
「持ってきたよ。耳かき」
「わたしの膝に頭を預けてみない?」
「膝枕、嫌だった?」
「いいじゃない。たまに任せてよっ!」
「もう、そんなに恥ずかしがることないじゃない」
「え。機会があれば? ふふ。いいよっ。でもいつになるかな~♪」
「ふふ。今度は我が甘やかされる番なのだ!」
「いいじゃないか。半身よ。我が身に任せれば」
「もう。お触り厳禁だよ!」
「いくら彼女だからってそんな尻軽じゃないからね!」
「もう、分かっていないなー。我と一緒に世界の悪と戦おうではないか!」
「悪? それは人の心の中にある闇。生きとし生けるものにある悪の感情。滅せねば世界は変わらぬ」
「我々は我々のために戦う――誰もがみな自身の闇と向き合うべきなのだ!」
ビシと人差し指を向ける。
「ふふ~ん♪ 格好いいでしょ?」
「え。そんなことない? またまた~、照れちゃって♪」
「人は愛のために生きるんだよ?」
「キミもそのために生きているのでしょう? 家族愛、恋人、友人。みな幸せにするには愛が必要なの!」
「そうでない絆は悲しいよ……」
「わたし。そんな世界は見たくないし、あってはならないと思うの」
「だから、一緒に幸せになるよ。愛を信じられる世界を作るよ」
「幸せを共有するの。それで世界は一歩平和になるんだよっ♪」
「ふふ。哲学者っぽくて格好いいでしょ♡」
「え。バカみたいかな? でも夢があるじゃない。何もないよりも持っている方がいいじゃない。素敵でしょ?」
「色々と考えたんだ。でも愛が必要なのはみんなだよ。みんな愛を知ってわかり合って、そうして少しずつ仲良くなっていけばいいのに」
「確かに仲良くできない人もいるよ。でも、わたしは信じたい。みんなが幸せになれることを。そんな日が訪れることを」
「わたし。みんなが好きだもの。人が、好きだもの。隣人を愛するんだよっ♪」
「もう、キミは束縛したいのかな?」
「それも愛だものねっ。でもいいんだよ。愛しているなら当然だから」
「さ。一緒に幸せになろっ! ねっ?」
「ふふ。いい顔しているねっ。キミ」
「良かった。幸せを感じてくれているみたい。明日も来るねっ!」
「じゃあねっ!!」
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