第9話 仕合わせ
あれから二年が経った。ジュンは小学校に入学。今は俺はアパートには住んではいない。都心の一角のマンションの一室にケイマと一緒に住んでいる。それからマイカも。
マイカとケイマは親子だと検査の結果分かった。ケイマは不思議そうにしていたが、お母さんだと俺が言うと「会いたかった」とポロポロと涙を流した。
マイカは後々語っていたが、母親だと今更知ってもなんともケイマは思わないかもしれないと思っていたらしい。
だから、ケイマが会えて良かったと泣いた時マイカも泣いていた。子供の時には寂しそうな姿は見ても、マイカの泣いている姿はこれっぽっちも見たことがなかったので、かなりびっくりした。
今や俺達の家に三人暮らし。
俺とマイカは婚約した。ずっと好きだったということも、今も自分の気持ちと状況も。仕事をしている普通の会社員だし、ロマンチストでもないけれどと言うと、彼女は嬉しそうな顔をしながら言った。
「じゃ、これから、三人っきりで色んな思い出作ろうね」
ケイマも小学生になって、勉強をするようになった。マイカは家庭教師でもすればいいんじゃないかと思うくらいに、教えるのが上手らしい。ケイマの学力が上がったことをマイカに話すと ケイマは賢いのね。きっと、将来大物になるかも なんて言いながら俺達は笑いあった。
食卓を囲む。今日お昼はマイカが作ってくれたソーセージロールとコンソメスープだ。ケイマも美味しいと笑顔だ。
この幸せな時間がずっと続けばいいと、俺は心の底から思った。
その次の日、俺はマイカとケイマと公園でピクニックをしている。
「天気がいいわね」
とマイカがレジャーシートを広げながら気持ちよさそうに言う。
ケイマもレジャーシートを広げるのを手伝う。
ケイマは食べることが好きになったようだ。マイカと一緒にいると更によく食べるし、よく笑うようになった。表情が豊かになってきた。それは良いことだと俺は思う。
マイカと二人で別荘で食べたご飯よりも当たり前だがマイカは腕を上げていて、俺もミートパイだけは得意。でも、あの頃と変わっていないと笑いながらマイカは言うので、そのままでいて欲しいと願う。
そしてケイマは俺に甘えるように、頭をこてんと当ててきたりするので可愛い。可愛すぎてどうにかなりそうだ。その度に俺は、胸が熱くなるのだ。愛おしくて仕方がない。
マイカも幸せを感じてくれているのか、俺はそれが嬉しい。こんな日々がいつまでも続いて欲しいと俺は思うんだ。
ある日のこと。仕事帰りに俺はケイマを学校まで迎えに行ったのだが、そこにはマイカも一緒に待っていた。
マイカが おかえりと迎えてくれた。それだけのことなのに、俺は泣きそうになった。ただいまと、声は小さくなってしまったけど言えたことにほっとした。俺は、二人の元まで歩く。
雪が溶けていて、春が来ることを予感させていた。もうすぐしたら春の花が見られるだろう。
〈了〉
ハッピーな仕合わせ 千桐加蓮 @karan21040829
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます