薬指触れた君の水掻き

rainy

薬指触れた君の水掻き

下ばかり見てる私は知っている一人一人の足の秘密を


ぱっくりと開いた靴の間から見えるよあいつの緑の踵


途中まで並んで歩きその先はあたしは塾へあいつは川へ


あおあおと甲羅の模様が付いていたあいつがシャツを脱いだ背中に


いじめっ子をぶん投げたりしちゃいけないよいじめっ子より危険な奴だ


泥棒と思われちゃったねぐいーんとよく伸びる腕持ってる君は


傘持たずずぶ濡れのまま立っていた長い両腕ぶんぶん回して


竜宮城みたいな滑り台の下膝立て座ればそこは水底


どう違うキュウリばかりを食べる君マーブルパンだけ食べてる私


「カッパ語を教えて」と言えば少しだけ伸びたね君の緑の口角


ヘンテコなお辞儀は頭の皿の水こぼさないようにしていたんだね


同級生に勝ったも同然カッパ飯おいしくペロリと食った私は


猫がゴミあさっているよ いや、違う イノシン カッパ 人間かもね


「殺されたカッパの死骸がその辺によく転がってた」と言うおばあちゃん


川底の道をたどって行けるかな地球の裏のカッパに会いに


どろんどろんと分厚い雨が降っていて世界がみんな水底みたい


違う!って言いたくて涙ためていた「カッパノセイデコウズイオキタ」


触れた手がヌルヌルしてても気持ち悪いってもう思わない、思わないから


手を合わせ私の右手の薬指微かに触れた君の水掻き


川底の虹の柱につかまって登れたらなと夢見てた君

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