「また……会えるかな?」


 優斗カレが辛そうに言った。わたしは笑う。


「会えるわよ、地球は思っているよりも狭いんだから……」

「そうだね」


 SNSとかを使っての無駄な連絡は必要ない。ただ、優斗キミとこうやってまた偶然会いたいと思った。

 誰に作り出された訳でもない、時間の悪戯によって会いたいと思った。そう言うものの方が凄く大切に思えるから。


「頑張んなさいよ、仕事!」

「うん、頑張るよ!」


 わたしは優斗カレの背中を思いっきり叩くと優斗カレは目を潤ませながらわたしを見て笑顔を浮かべた。

 この笑顔は、わたしだけのものだった。いつまでもわたしだけの手の中に留めておきたかった。でも、そこから抜け出したのは優斗キミ自身……それを零したのはわたし自身……


 雨の中、傘も差さず立ち去ろうとする優斗の背中は、あの頃より大きく見えた。


 わたしは再度優斗カレを見た。

 雨はまだ降り続けている。しかし、雲の切れ間から青空が見えていて、後ろ姿は光射す彼方の空の中に溶け込むように消えていこうとしている、


 わたしが全ての力で追い続けたほんの小さな……でもとても大切な……夢そのものだった。


 それは優斗キミと一緒に歩き続ける……という夢……


優斗ユウ!」


 わたしは久しぶりに名前を呼び、優斗カレの下へと全力で駆けた。あの光を捕まえるかのように……


「元気でね!」


 背中に抱き付き、別れの挨拶のつもりでわたしは言った。


「うん、詩音しおんも!」


 優しい優斗キミは相変わらず……だからわたしは傘で覆い隠し優斗カレの胸板に頬を添え、抱きついた。親愛のしるしに。

 驚いている優斗キミに唇を重ねると、戸惑うように垂れ下がっていた腕は、わたしの背中にを抱きしめている。


「See you again……」


 わたしは傘を優斗ユウに押し付け、後ろを振り返らずに走った。

 時の定めがもしわたし達を結びつけるとするならば、この先優斗カレとわたしが別々の人生を生きても、どこかでまた会える。それまで優斗カレを抱きしめた感触を忘れないでおこう。


 ずっと言えなかった『愛している』という気持ち。それはカタチを変えても、それはちゃんとわたしの中に息づいていた。

 優斗カレの笑顔を見て、わたしはわたしを思い出した。ただ憧れ、一途に優斗カレだけを想っていたわたしを……この思いは大切にしたい!

 そして押し付けた傘が、いつしか再びわたしの手に戻ってくることを願ってみよう。


 1年前の小さな傷は誰にも気づかれることなく、光射す雨の空に消えた。


                       Fin



‗/‗/‗/‗/‗/‗/‗/‗/‗/‗/‗/‗/‗/‗/‗/‗/‗/‗/

オリジナルキャラクターの詩遠のイラストを描いて、

思いついて作った物語です。

どろどろビター情愛は苦手なので、甘い感じで書いたラノベです。

最後までご覧いただきありがとうございました

                      朝霧 巡

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See you again…… 朝霧 巡 @oracion_001

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