映画の外

篠原仮眠

映画の外


はじめてのギターがうまく弾けちゃって海は無音で夢だとわかる


忙しくなれ、忙しくなるぞ、ってかんじで緑濃くなってきた


あれもこれも乗物みんなぜんぶ楽器って言える世界にさっきまでいたんだよ


翻訳は古い光を新しい影に連れてくみたいにするの?


どこへでも自由に行けよおれたちは映画の外から映画の外へ


ひかりさす それはあんまり珍しくないんだここはいつも暗いし


夜見てもびっくりしない眩しさを差し上げたいよ君に枇杷を買う


まっくらにまっくろをみせようとして照らしちゃったらおしまいじゃんか


似てるとこばっかりだからそうじゃない部分をことさらに言うんだろ


両足を両足と呼ぶようにおれたちをひとまとめに呼んでくれ


なんとなく春に来れたらもっとよかったっすねとか言うけど いい景色


やろうと思えばまあ、ここでサーフィンしたりする暮らしもあったわけか


ありがちな味のアイスが似たような記憶をぎゅっとまとめてしまう


混ぜちゃっていいです近い星とかは一つに見えたりするらしいから


実際に廃バスがある草むらがロケ地みたいに人懐っこい


おそろしくきれいなものに触る 手を洗う 川面かわもが西日をはじく


ずいぶんと歩き回って心だけ測量できたやっとひとつの


真剣に、葉っぱの中に緑の実いっぱいあるの見つける気持ち


昨日までは考えたこともなかった行き先に二人なりの行き方で


どうして君はここにいるんだろうと思うときここはおれの場所なのかよ


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

映画の外 篠原仮眠 @s-n-h-r

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ