短歌には、「連作」という概念があります。いくつかの短歌のまとまりにタイトルをつけることで、一首のみで味わうのとはまた異なる味わい方ができるのですが、この作品は特に、連作として読むことでより楽しむことができる作品だと思います。「バケモノを被っていたら」「お守りが沈んでる」「クリスマスツリーを飲んで」といった息苦しくなるようなフレーズが続き、読み進めるごとに胸のなかに石がどんどん積まれていくような感覚になります。最後の歌、「花を知らない人に花を描かせたことへの拍手みたいな拍手」も「拍手」なのに素直に喜べないような不穏さが漂っています。そして、改めてタイトルを味わってみましょう。「戦車の中はもっと窮屈」。この言葉のつめたい手触りが全体をラッピングして、短歌それぞれがより魅力的に、胸のなかの石はよりずっしりと重くなっていくはずです。
(「短歌、わたしたちだけの踊り方」4選/文=初谷むい)