第19話 決闘

 リグニル学院は何度も言うが世界中から稀有けうな才能が集まる。

 そのため、各国の軍事を扱うものや、傭兵や冒険者らなど、もしくは単純に娯楽に飢えている一般市民などの外部の人間に大きく注目されている。

 そのような理由からリグニル学院は闘技場を所有しており、そこで序列戦の観戦をできるようにしている。


 そして今日はあの序列戦の決定から3日後、つまりはもう当日なのである。


 なんかあの後にニーナに色々言われていた気もしたが、今日という日が楽しみすぎて、内容すらもよく覚えていない。


 今はもうなんとかごちゃごちゃうるさいニーナを振り払って控え室にいる。


序列戦の戦場である闘技場は入学試験で使われていたものと同じで、いくらダメージを負っても大丈夫な学院長お手製のやつだ。


 俺らの後に序列一桁同士の上級生たちの序列戦もあるようで、前哨戦を観戦するつもりできた観客たちの声援が聞こえてくる。

 

 ……なめられてんなァ


 俺が会場に出ていくと、好奇の視線が集まる。

「未来に期待」だの「次の試合が楽しみだ」だの、見てもいないのに随分と好き勝手に言ってくれてるなァ。


 反対側の入場口から出てきたゼンも、同じことを考え、不快に思っているようだな。


「よろしくなァ、ゼン」


「あぁ、よろしく」


「ところでこの雰囲気、気に入らなくねェかァ?」


「まぁ……そうだね。俺らでやってやるか」


「あァ」


 審判をしている教師の合図により今、戦いの火蓋は切られた。


 合図による開始とともに、俺ら2人の間には膨大な魔力が渦巻く。


 通常、魔力というものは目視することはできないが、ベテランの魔法使いのレベルになると、高度に練られた魔力が可視化されることがある。

 そういう方面に詳しい人間は、まさか一年生が魔力の可視化を行うなどとは思っていなかったのだろう。まさか、とでもいうような驚愕の表情を浮かべてい

 る。


 ま、俺らは互いにできることなんてとうにわかっていたがなァ


 俺が事前に知っている情報としては、こいつの固有魔法が数十年ぶりに発見された空間魔法の所持者であり、他にも3個の属性魔法を有している、ということくらいだ。


 どんな魔法なのかは大まかにしか知らないが、そんなものは戦っていくうちにわかっていくだろう。


 まあ定石として、魔法使いは近接が苦手なことが多いし、一旦剣で仕掛けてみるか。


 俺は剣を抜き、重力魔法で重さを倍増させた剣を握り、距離をつめる…が、善の属性魔法の一種である土魔法によって阻まれる。


 まあそんなもの関係ないのだが。


 俺は壁が生成されるよりも速い速度で破壊するのを繰り返し、ジリジリとゼンとの距離を詰めていく。


 え?なんでそんな速度で動けるのかって?


 魔力操作を応用した擬似的な身体強化に決まっているだろう


 ついに最後の壁を突破し、刃がゼンの首をとらえた───と思うと、刃がゼンに触れる瞬間に止まった。


 反撃を警戒し、思わず後ろに飛び退くが、ゼンが何かをしてくるような様子はない。

 それどころかニヤニヤしていかにも余裕そうな表情を浮かべている。


 ……うざいな。


 おそらくあれこそがゼンの固有魔法である『空間魔法』だとは思うが、どういう仕組みかはまだわからないな。

 もう何度か試してみるか。


俺は次は自分自身にゼンの方向に指向性を持たせた重力を発動して、常人では不可能な速度で突撃する……が、ゼンの近くに行くと空中で体が止まる。


 

   動けないッッ!!



ゼンが動けない俺にめがけて


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なんか異世界無双の筈なのに混じっていた天才 コーク @adgjmptwadgjmptwad

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