五月日記

オボロツキーヨ

ねこ背だと五月の空に笑われて


ひびわれた指に絡まるどくだみが青い息吐き片目をつぶる 


どくだみに刃向かうなんて無謀だと敗者のために五月の風吹く


遠い日の家族はいずこ廃屋の破壊者それは緑爆弾


どくだみをむしり血潮にあてがった鎌倉武士が行く乱橋みだればし


喧噪を避けて小道を行く人は中世の影を踏みしめていた 


マテバシイに住んでいるのはメジロの子しいと静かに待ってるらしい


夏鳥が歌のおけいこホーホーオわれは詠うよケキョケキョと


薔薇園へ行きたいけれど庭に咲く薔薇一輪が妬いて袖引く


しろたえの小さな薔薇は「春の雪」見つめられるとふっ と色づく


ねこ背だと五月の空に笑われて見かえしたくて背をそらす午後


雨女が浮かれていると泣く空 龍神様と絶縁したい


玉鋼たまはがね粒子が動く月夜には太刀の刃文がよせてはかえす


ものうちがけた短刀いにしえの人の生き死に見たぞと笑う


太陽が光冠かぶる熱射の日 稲村ヶ崎に太刀を架ける


極楽寺で見初みそめられたセキレイと薫風光る白い道行き


セキレイの家の間取りは知らねども霊芝が化けた緑のほこら


江ノ電を見ながら食らう鰺干物 心と腹に海を満たすよ


あ、小っちゃなコーンのアイス落としたーそんな形のどくだみの花


どくだみは夢二が好きな白い花なめたら甘いバニラの味か


墓石の影から覗くバニラ様あの世この世の五月の友よ

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