♯6 壁がある日常

//SE ドアを開ける音



「ただいまー」


「あれれ? 返事がないぞ? おーい、帰ったぞー」


「あれ? 壁くん?」



//SE こちらに近づいてくる足音



「あーー! いた! 私のこと無視したなーー!」


「って、あれれ?」


「……」


「……」


「立ったまま寝てる……?」


「壁くん、おーい」


「……」


「やっぱり寝てる」


「……毎日、こんなになるまで待っててくれてるんだね」


「仕方ないなぁ。今日は寝かせてあげよう」


「よいしょっと」



//SE 衣擦れの音



「そのままじゃつらいでしょう? 私が布団まで連れて行ってあげるから」


「よ、よいしょ……! 壁くん重いよぉー!」


「んしょ……んしょ……」



//SE ベッドに横になる音



「よし、準備完了」


「それじゃあ、私と一緒に寝ようか?」



//SE 布団を被せる音



「んー、あったかい……」


「えへへ、壁く~ん」


「んー……」


「壁くん、寝てるみたいだから色々お話しちゃおうかなぁ」


「壁くん、最初に私に告白してきたときのこと覚えてる?」


「いきなり私を見守る壁になりたいって言ってきたんだよ」


「ふふっ、おかしな人だよね」//はにかみながら


「でも嬉しかったの。とっても嬉しかったの」


「私は君に見守られていると思うと凄く安心できた」


「それに、君は私の言うことを何でも聞いてくれるし」


「だから私も君のお願いを聞いてあげたくなったの」



//SE 衣擦れ音(彼女が強く抱きしめてくる)



「ねぇ、壁くん」


「私は君が思ってるよりずっと悪い子だよ?」


「だって、こうやって君の家に押しかけて一緒に暮らしちゃうくらいなんだもん」


「だけど、これだけは信じてほしいかな」


「私は壁くんのことが好きだよ」


「誰よりも大好き」


「この気持ちだけは本当」


「だからね、もう少しだけそのままの君でいて?」


「まだしばらくは、こうして君のそばにいたいなって思うんだ」


「ごめんね。わがまま言って……」



// SE 衣擦れ音



「……」


「壁くん、何も言わないなら心臓の音聞き放題だよね……」



// SE 衣擦れ音(彼女が抱きついてくる)

    心臓の音(少し早い)



「ん~? あれれ~? いつもより心臓の音早くない?」


「仕方ないなぁ」


「えいっ!」


「えへへ、もう寝たフリしてるのバレバレだよ」//嬉しそうに


「そんなことしても無駄なのにさ」


「君の心臓の音、聞けば分かっちゃうんだからっ!」



// SE  心臓の音(少し早い)



「ほらまた速くなった!」


「かわいいなぁ、もう!」//耳元で囁きながら


「これから先もずっと一緒だからね……」


「誰にも渡さないよ?」


「壁くんは私だけのものだからねっ」


「ちゅ――」







//SE 鳥のさえずり



「んー! おはよう壁くん!」


「あははは! いつの間に一緒に寝ちゃってたねっ!」


「んー? つらかったって何がー?」


「ちゃんとつらかった理由言わないと分からないよ~?」


「あはははは! 壁くんものすごく恥ずかしそうな顔しているよ?」


「もぉー、壁くんは朝から可愛いなぁ」//声を弾ませて


「……っ!」


「……」



(少し間を置く)



SE// 彼女の吐息



「ねぇねぇ、壁くん……」//恥ずかしそうに


「朝から悪いんだけどさ――」


「……私の心臓の音聞いてくれる?」











僕の彼女は心音フェチ ~彼女を見守る“壁”に就職した僕と、少し変わった趣味を持つ彼女との日常~


~FIN~

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕の彼女は心音フェチ ~彼女を見守る“壁”に就職した僕と、少し変わった趣味を持つ彼女との日常~ 丸焦ししゃも @sisyamoA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ