三角関係

第1話

「ねえねえ、結衣ちゃん。お水持って来てあげたよ」

「ありがと、孝太郎。……ねえ、和人、今度いっしょに映画観に行かない？」

「いいけど。孝太郎も行くよね？」

「行くよ、もちろん！　結衣ちゃんといっしょに行きたいし！」

「……なによ。孝太郎は映画、好きじゃないじゃない」

「そんなことないよなあ、孝太郎？」

「うんっ、和人。おれ、アクション映画、好きだよ」

「あたしが観たいのは、アクションじゃないもんっ」

「僕はアクション映画、好きだよ」

「だよなー、和人といっしょによく映画観たよなっ。車走らせるやつとか」

「何よ何よ！　あたしの観たい映画、いっしょに観てくれてもいいじゃない！」

「結衣はどんなのが観たいの？」

「結衣ちゃんが観たいもの、おれ観るよ！」

「……恋愛映画とか」

「恋愛映画かあ」

「いっしょに行こうよ！　なあ、和人もそう思うだろ？」

「……もういいもんっ。二人で映画行けばいいじゃないっ」

「あー、まあね。恋愛映画は恋人同士で観るといいよね」

「おれは結衣ちゃんと恋愛映画、観に行きたいよ！　れ、恋愛映画、いっしょに観たいよ！」

「だってアクションが好きなんでしょ？　恋人同士で観るといいって、和人も言ったし」

「まあだよねえ」

「お、おれは結衣ちゃんと恋愛映画観る！　だって、おれは結衣ちゃんが好きなんだっ。……あっ、こ、告白しちゃった！」

「えっ。……あたしは、和人が好きなんだけど……」

「――僕？　ふたりとも、僕の意見待ってるの？　僕のこと、じっと見て」

「あ、それおれのです、とんかつカレー」

「ちらし寿司はあたし」

「僕はステーキセット」

「あーあ、お腹空いたなあ。……うめ！　ところでさ、話戻るけど、和人、お前誰が好きなんだよ」

「あたしも聞きたい！　……おいしい！　意外といけるじゃん、これ」

「……僕の好きなひとを知りたいの？」

「おう！」

「うん！」

「僕が好きなのは、孝太郎、きみだよ？　高校のときから、ずっと好きだったんだ」

　和人は横を向いて、隣に座っていた孝太郎にキスをした。

　　　了

一話完結です。

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