後編

 まじか……


◆ ◆ ◆


名前:富野 俊也

種族:人族

性別:男性

年齢:13

職業:ーー

状態:興奮

スキル:言語理解、水魔法、俊足


◆ ◆ ◆


 「ステータス出てきたんですけど……」


 みんなもステータスと唱えると出てきた模様。

 母さんはゲームで慣れているらしく、早速検証しはじめている。


 それぞれのステータスはこんな感じらしい。


◆ ◆ ◆


名前:中山 菫

種族:人族

性別:女性

年齢:13

職業:ーー

状態:不安

スキル:言語理解、料理、栽培


◆ ◆ ◆


名前:富野 護

種族:人族

性別:男性

年齢:??(40)

職業:ーー

状態:正常

スキル:言語理解、検索、結界


◆ ◆ ◆


名前:富野 燈

種族:人族

性別:女性

年齢:??(38)

職業:ーー

状態:正常

スキル:言語理解、鑑定、火魔法


◆ ◆ ◆


名前:中山 強

種族:人族

性別:男性

年齢:??(40)

職業:ーー

状態:正常

スキル:言語理解、アイテムボックス、頑強


◆ ◆ ◆


名前:中山 穂乃花

種族:人族

性別:女性

年齢:??(41)

職業:ーー

状態:正常

スキル:言語理解、交渉、土魔法 


◆ ◆ ◆




 全員に言語理解があった以外はチートはないと思ったら……両親たちの鑑定やアイテムボックス、結界がチートな件……

 母さんが生き生きしてみんなにスキルをチェックさせてはアドバイスしてる。

 母さんの鑑定でも俺たちのステータスがチェックできるみたいだ。


 その結果、父さんの検索スキルは過去に見たりきいたことのある情報を検索できるみたいだし、おじさんのアイテムボックスにはキャンプ時に持っていた荷物がそのまま入っており数日……いや節約すれば1週間程度なら食には困らなそうだという発見もあった。

 

 「けっかい?もつかいこなせればあんぜんせいがたかまるね[結界?も使いこなせれば安全性が高まるね]」

 「そうね、アイテムボックスにしょくりょうがあるのはたすかるわね[そうね、アイテムボックスに食料があるのは助かるわね]」

 「だな!テントもあるし、つりざおまではいってるぞ![だな!テントもあるし、釣ざおまで入ってるぞ!]」

「うーん、でもそざいとかはへんかしてるみたいだわ[うーん、でも素材とかは変化してるみたいだわ]」


 そう言われてはじめて自分の服や靴が変化していることに気づいた。


 「こっち仕様に変化したってことかー」

 「……そうかも。服もちょっとゴワゴワしてるし」


 まあ、異世界転移ものでは服の素材が変わるかは半々の確率だよなぁ……着てる服を売って目を付けられるとかいう話もあるし目立たないってことでいいか。


 「それにしてもげんごりかいはきょうつうとして、ひとつはランダムでもうひとつはなまえにかんれんしてるのかしら?[それにしても言語理解は共通として、ひとつはランダムでもうひとつは名前に関連してるのかしら?]」

 「そういわれれば……」

 「いま、きづいたわ」


 たしかに父さんの名前は護でスキル:結界だし、おじさんは強でスキル:頑強だ。そして俺も俊也でスキル:俊足があった。関係あるのかも……まず、スキルとかステータスがある時点で軽くパニックだ……現実味が湧かない。


 これからレベルや習熟度で項目が増えるのだろうか?そんなものがあるかは不明だけど。


 取り敢えずこちらで怪しくない名前を考えて決めてみることにした。現実逃避というやつだ……すると


◆ ◆ ◆


名前:シュン(富野 俊也)


◆ ◆ ◆


 に変化した。


 「しゅん君は何してるの?」

 「とりあえず名前変えてみた。小説では名字があると面倒なことになってるからさ。シュンに決めたらステータスの名前も変わったぞ」

 「そっか!私もやってみる!えっと……あ、ミレーに変わった!」


 その側では親(暫定)たちが


 「へぇ?つとむだからトムにするのかとおもえばそうじゃないんだ?」

 「あー、みょうじからとったんだわ」

 「おれもみょうじからとってトミーだけど……なぜにミドル?」

 「そりゃなかやまのなかはサイズでいえばMだろ?だからミドルだぞ!」

 「おまえがいいならいいけど……」

 「おう!いいなまえだろ!」

 「わたしもなやんだんだけどね……ほのかをうしろからよんでカノにしたのよ」

 「わたしはすぐにきまったわ!ゲームのときにいつもつかってるアリーよ」


 この会話、見た目4歳児がしてるんだぜ……違和感しかない。


 「ねぇ、これからどうする?」

 「迷子になったらその場を動くなっていうけど異世界転移は含まれないよなぁ」

 「すうじつ、ここでキャンプしてみるか?」

 「いや、異世界だよ?魔物とか盗賊が出たりすんじゃないの?」

 

 そんな時……遠くからカタカタと音がしてそちらを見ると馬と御者台に乗っている人影が見えた。


 「え?まさかフラグか?盗賊か?」

 「かくれる?」

 「みわたすかぎりそうげんだ!かくれるばしょがないぞ!」


 うわ……詰んだかも……その間もどんどん距離は詰まり……


 「おぉーい!おめーら、こんなとこでなにしてんだぁ?」

 「え、あの……」


 相手はひとりみたいだ。出会い頭に斬りつけられたりはせずひと安心かな。


 「まいごなの」

 「おめぇたちだけか?」


 あ、大人がいないから怪しんでるのか?いや、見た目からしてこの辺の子ではないとわかったようだ。だって、おっちゃん欧米人みたいな顔だもん。


 「うん」

 「ほーう……おら、村から街まで野菜売りに行って帰る途中だぁ。ついてくれば村まで行けるぞぅ?」

 「いいんですか?」

 「おう!この辺りは盗賊はほとんど出ねぇし、魔物も弱っちぃかんなぁ。街道には魔物よけがしてあるしな!ただ村は何もねぇし、子供なら街の方がいいかもしんねぇなぁ」


 うーん。俺の勘ではおっちゃんいい人そうだけど……信じていいものか。

 この辺りのには盗賊はほとんどいない上、魔物も弱く、街道には魔物よけがしてあるというのが真実ならかなりありがたい状況だ。

 

 「ちょっとみんなと相談させてください」

 「おう、えーよー」


 すこしだけ離れてコソコソ……


 「どう思う?」


 自分の勘が大外れでこのおっちゃんが悪者だったら奴隷とかにされるかも?と読んだことのある小説を元に考えた。小学校までは読んでいたが、中二病になりたくなくて中学入学を機に控えるようになったのだ。(控えるだけで読んではいる)

 むやみに信用してついていっていいものか……


 「かんていしてみたら?」

 「やってみたよ!」



◆ ◆ ◆


名前:ロージャー

種族:人族

性別:男性

年齢:43

職業:農家、村長

状態:正常


◆ ◆ ◆



 「むきょかだとスキルはみれないみたい」

 「職業が農家で村長さんなら信じてもいいのかな?」

 「すぐに逃げられるようにしながら怪しまれないように情報を聞き出してみるか?」

 「うん、まずはそれがいいかも」

 「わたしにまかせてくれないかしら。こうしょうスキルがつかえるかもしれないわ」


 おばさんが人懐っこい子供を装いながらおっちゃんから聞き出せたのは……


 街道の魔物よけはこの辺りの弱い魔物なら寄ってこないらしいこと。盗賊もいないというのは領主が雇った兵士や冒険者などが定期的な見回りをしているためだとか。

 ただし、街道から外れれば魔物との遭遇もあるため要注意みたいだ。

 

 ロステン村よりファンダレルという街の方がここから近いこと。

 ファンダレルでは身分証か通行証がない場合、簡単なチェックを受け犯罪歴がなければ入れるとか。

 その上、街では流民や孤児などに職を斡旋してくれたりと領主が色々な取り組みをしているらしい。

 ファンダレル周辺は穀物の一大生産地らしく、冒険者ギルドへ行けば農家のお手伝いなどのクエストが沢山あり、子供だけでも生活できるらしい。



 決定的だったのは、ファンダレルまでは子供の足だと半日近くかかるらしいが、ロステン村までは歩いても夜までに着けなさそうだし、もしおっちゃんが荷台に乗せてくれたとしても返せるものが何もないことだった。

 なのでひとまず街に向かうことに決まった。


 「街へ行ってみようと思います」

 「そうかー。この街道をずーっと行けば着くからなぁ……」


 そう言われれば草原のなかにうっすら街道らしきもの続いているように見えた。


 「ありがとございます」

 「おめぇら、水もねぇのか……ほれ、これ持ってけ」

 「あっ……」


 おっちゃんは水と簡単に食べられる果物を分けてくれた。そう言われれば荷物も持ってないとか怪しいよな。あとでおじさんのアイテムボックスから出して誤魔化せるように相談しよう。

 


 「ファンダレルでにっちもさっちもいかなくなったら、ロステン村に来りゃあええぞー」

 「「「「「「ありがとう」」」」」」

 「んだ。可愛い子供連れて兄ちゃんもてぇへんだなぁ?きぃつけろよー」


 おっちゃんを見送った後、アイテムボックスからリュックや食料、水などをいくつか準備して自分が背負う。だって、親たちが幼児の体で半日近く歩くと思うと心配だし。親たちを抱っこして移動することも視野にいれないといけないかも……


 おっちゃんからもらった水や果物も母さんの鑑定後、安心して食べられることがわかったのでありがたくみんなでわけた。甘酸っぱかったけど美味しかった。


 時々、休憩を挟みながらひたすら歩く……両親たちも小さな手足に苦労しつつも頑張ってくれたので日が暮れる前には周囲にだんだんと畑が増えていき、ちらほら人を見かけるようになった。のどかな田舎のような雰囲気だ。


 「あ、あそこが門みたいだ!」

 「やっとかー」

 「もうすこしよ!がんばりましょ!」

 「うん!」


 早速、門へ向かうと中へ入るために数人が並んでいるようだ。大人しく後ろへ並ぶ……見た目からして流民に見えるらしく、簡単なチェックを受け犯罪歴がないと確認されたあとは門でもとくに何も言われず入門料的なお金も取られなかった。おっちゃんの言ってたことは正しかった。


 「ようこそ、ファンダレルへ」


 ようやく街へ到着できた安堵とこれからについての不安がない交ぜになる……異世界転移は荷が重いけどひとりじゃないから大丈夫……だよね?だといいなぁ……


 こうして、シュンたち一行はまずはロステン村の村長のおっちゃんに親切にしてもらったお礼ができるように頑張ろうと新たな一歩を踏み出したのであった。


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異世界転移は荷が重い 瑞多美音 @mizuta_mion

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