番外編

番外編 自分の作品の質をなるべく客観的に分析する

 本著を執筆するにあたって、「私自身に作品の執筆経験が無かった」「他の作者の方の作品/文章に対する意見の文章である」ということもあり、私自身が書く・書いた文章をできる限り良いものにするよう様々な検討を行っていた。その内容を見返す中で私と同じような執筆初心者の作者の方の参考となる部分もあると思い、番外編として改めて筆をとったものである。

 なお、タイトル通り自身の作品の分析についての話であり、作品自体の内容や改善に繋がる話ではない旨、ご承知頂きたい。


 「読者から評価を貰えない」「私の作品は面白いのに読んでもらえない」カクヨムに小説を投稿する作者の大多数が一度は考える悩みかと思う。ここで一度問い直してみて欲しい。「私の作品は本当に面白いのだろうか?」

 前向きな行動のための分析に必要なことは、自分の不甲斐なさを悲観するだけだったり読者に責任を転嫁して不満を感じたりの感情論ではなく、実際に起っている出来事やデータから判断することである。


 「自身で文章を何度も推敲して質を向上する」「仲間の作家にアドバイスを貰い改稿する」などの努力は、作品の質を高める上で非常に重要なことだと思うし、私自身も自作を執筆する上で何度も行ったことではある。しかしながらこれらによる作品の評価は「主観」にならざるを得ない。

 本編でも述べたことだが「この小説は面白か?」は読者によって異なる。自分の作品が面白いかを客観的にみるには、「読者」という集団に確認するのが一番かつ唯一の方法である。


 それでは、私が今回行った具体的な検討内容を見ていこうと思う。



1. 評価したい作品の1話につき「30〜50PV」を獲得する


 PVや評価を得られない悩みと矛盾を感じるかもしれないが、分析するにはまず一定数の読者に作品を読んで貰う必要がある。このPVの獲得のためには自主企画イベントへの参加やSNSの告知など積極的な宣伝をして貰う必要がある。最新話を投稿すると1〜2PVあったりするので気長に待つのも良い。分析に適切な読者であればこのPV数は多ければ多いほどよい。

 この時注意して欲しいのは、恣意的な読者がなるべく混ざらないことである。「面白くない作品でも応援する読者」は間違った結果につながるため、なるべく一般的な読者と似た反応をしてくれるPVが望ましい。

 私の場合は元々は別の意図だったが、自開催のイベントから一定数の方に作品を読んで貰えたものを参考にした。



2. 読者を分類する


 分析の前段階として、読者が以下のようなタイプに分類されることを認識して欲しい。これは私自身が分析を行う上で想定される読者行動パターンで適当に分類したものである。作り直しても良い。仕事ではないので厳密な必要はなく、なんとなく正しそうな分析結果が得られれば良い。


 a. 相互フォロー、相互応援

 b. イベントからの読者

 c. カクヨムディーブユーザー、作品のファン

 d. 反応が薄い一般読者


 「a」は前述の「面白くない作品でも応援する読者」で、データノイズになるためこの読者からの反応は分析からは除外する必要がある。

 「b」「c」は私の分析では同じタイプとして扱ったが、「宣伝から読んでくれた読者」や「PV数の少ない作品を検索して読む読者」「作品を継続して読んでいるファン」など、読んだあとに積極的な反応が見込まれる読者である。

 「d」はそれ以外の一般読者で、どんなに面白くても感動しても反応しない読者も一定数存在する。というか大多数である。それら読者の反応割合を検討する。



3. 分析指標を作る


 私の場合はなるべく恣意的なデータが混ざらないよう、母数の多いランキング上位の作品を参考にした。作品に特徴がある場合には「同じジャンルの作品」や「ライバル視している作品」を指標にするのも良いと思う。

 今回は一話ごとの反応を確認したいこと、「★(レビュー)」は読者の反応基準が分かりにくいことから、「♥(応援)」だけのデータで分析を行って「読者満足度」を考える。なお以降では省略のため「応援数÷PV数」の割合を「fav率」と呼ぶ。


(1) 人気作最新話の投稿後24時間頃でfav率は「5%〜10%」ほど。固定ファンが多いと思われる作品で「15%」。

(2) その後もPVは伸び続けるがfavはほぼ増えない。PVが伸び切るとfav率が「1.5%〜2%」ほどに落ち着く。

(3) 自著のような弱小作品には読者の自然流入はほぼ無いので、PVが伸び切っても読者タイプは「(1)」と同様のみと考えて良い。自著にはさらに「積極的な読者」の割合が多いと思われるので、fav率「10%〜15%」獲得するのを目標値とする。


 この時の指標も厳密でなく感覚的なものを含んでよいが、自分の作品に対して厳しめの条件を設定する。分析結果やその後の読者の反応が思ったものと大幅に違った場合には、指標の設定ミスや恣意的なデータが混ざっていることが考えられるので、もう一度見直してみるのが良いだろう。



4. 自分の作品を分析する


 ここまでで私の作品の「読者満足度」の目標値を、fav率で「10%〜15%」を得られることに設定した。ひとつの指標でしかないが、この数値を達成できればランキング上位作品と同程度の読者満足度の文章が書けている、と考えられる。

 最初にこの分析を行った時点では、第2話まで投稿していた状態で「10%」程度の状態だったため、ブラッシュアップ・改稿を何度か行い、その後のPVではfav率「20%」ほどに改善した。ここまでたどり着くと読んで貰えれば読者に満足してもらえる文章が書けた、という自信になる。

 実際はデータの母数が少なく一つの反応での誤差も大きいため、「何話か合算した反応」や「誰がどのような反応をしてくれたか」も考慮して厳しめの分析を行うと良い。



5. その他の分析もしてみる


(1) PV数の遷移

 例えば第2話から第3話の間でPV数が大幅に落ちている場合、第2話の内容が読者の期待に応えられず離脱に繋がった、などを疑うことができる。

 投稿日が異なったり特定の期間に大量のPVがあった場合にもPV数がズレることはあるが、期待以下の数値の箇所は作品の改善点である可能性がある。


(2) 一般読者からのレビューコメント/応援コメント

 交流のない作者に対してコメントをするのはハードル高い。その中でコメントを付けてくれる読者は、ハードルを超えてでも「作者に感想を伝えたい」「他の読者にこの作品の良さを伝えたい」という強い想いを持ってくれている状態である。

 一人だとたまたまその読者だけにハマった場合もあるが、複数の読者からコメントが貰えた場合は、コメントをくれた読者以外からも高く評価されている可能性が高い。

 なお相互コメントや相互フォロワーは、コメントに強い想いは無いのであてにはならない。


(3) 読者からの改善点の指摘

 読者から改善点に関する感想を貰えるともっと直接的で分かりやすい。ただ悪い感想も貰うと気分が良くない人も多く、カクヨム自体も良い感想のみを送ることを推奨しているようなので、その機会はなかなか難しそうである。


 他にも自分や作品にあった分析方法を探してみるのも良いと思うが、なるべく手間がかからずそれなりの結果を得られる方法が良い。仕事のように責任を伴うものではないし、創作を邪魔するほどの手間をかけるのは本末転倒になる。あくまで自分の作品を改善するための手助けとなる作業である。




 ここまでの分析が行えると「私の作品は面白いのに読んでもらえない」というのがかなり客観的になり、自分の作品に自信も持てるようになる。私の本著でもその後にありがたいことに「ジャンル別ランキング」に掲載され多くの方に読んで頂くことができたが、「10%」程度の応援を継続して頂くことができていた。


 過剰な宣伝活動などは私個人は好きではないが、作品の質を高めることに注力するだけではきりがない。作者自身で納得のいく質と読者からの反応を得られたら、それ以降は一度アピール不足を疑って適度に宣伝を行うことで、より多くの読者に読んで貰える・評価して貰えて、あらたな執筆活動のやりがいに繋がることもあると思う。

 もしアピールがPVに繋がらなくても、作品が陽の目をみるのは運や偶然の要素が大きいと割り切って、気長に待ったり次の作品で別のアプローチを試みたりするのに、気持ちが楽になるのではないだろうか。

 本項で述べさせて貰った分析も自分の作品の質を確認するひとつの方法に利用して頂ければ幸いである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

こんな小説は読まない。どんな小説? たなかは趣味ない @tanakap

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ