あとがき

 あとがき

 『闇路』をお読みいただきありがとうございます。他の短編を読んでくださった方はご存じかもしれませんが、僕はあとがきを「作品についての情報を読者に伝える最後の機会」と捉えているため、ネタバレ等の配慮なく作品の意図やら裏話やらを明かせるだけ明かすようにしています。そのため、先に本編を読んでからご覧になっていただければと思います。また、ここに書かれていることはあくまで一学生の浅知恵によるものにすぎず、小説の本質の一つであるところの自由な考察を奪うものではないので、作品を読んで何か考えたり、感じたりしてくださったことがあったらそれは是非大切にしておいていただければ幸いです。


 ☆タイトル

「闇路」→暗い道という意味で、心が迷っている状態のことも指す言葉です。物語が闇の中で展開されることと、登場人物たちがそれぞれ迷っているこの作品に合うと思い、このタイトルを付けました。


 ☆ネーミング

 ・倉井昇→「暗い」と「昇る」。そのままなんですけど、名前に光と闇の両方の要素を持たせたくてこういう感じになりました。

 ・落合光→「落ちる」と「光」。これもまあ割とそのままです。先に光の名前の方が決まって、昇はそれに合わせる形で考えました。

 ・キョウとカイ→「境界」。生と死の狭間に存在するものとして、また「選択」を捨てたものとして、これが合うかなと思ってそのまま付けました。今作何の捻りもないな。実は制作がまあまあギリギリで、名前をじっくり考える余裕があまりなかったのが理由です。


 ‪☆作品を書くにあたって考えたこと‬‬

 僕はいつも話を書く前にテーマとして扱う概念を決めます。今作は見ての通り「闇」の話となったわけですが、イメージ通りにバッドエンドではつまらないと思って「闇の話でハッピーエンドを書いてみよう」と考えました。そうなると闇を抜け出して光へ向かう形が真っ先に思い浮かびます。しかし、本当にそれがハッピーエンドとして正しいのかと思い、一旦手を止めました。闇の話がバッドエンドになるのが安直でつまらないように、こうして闇を悪者にすることそれ自体が安直でつまらないと思ったのです。光と闇を生と死に置き換えることも安直といえば安直ですが、このモチーフを使うことで、僕が「死」は悪者という先入観のもとに書いていると思わせる効果が期待できるので使っています。見苦しい言い訳だ。

「暗いところが好き」という人を時々見かけます。かく言う僕も暗い所が結構好きです。ずっといるのはごめんですけどね。そういうわけで、闇には闇の魅力があると思っています。だから、闇を好む人を否定したくない。ただ、それを嫌うあまり中道のようなはっきりしない結論に至るのもまた好ましくない。そこで、テーマは闇のまま、物語が伝えるメッセージについて考え直しました。

 闇に限らず、結局「人それぞれ」が答えになってしまう問題に、人間は自分なりの考えを持って生きています。僕はそこに本質があるのではないかと思って、それを物語の中心に据えました。すなわち、「答えを出すこと」こそが人間の本質の一つだと考えたわけです。カイの言う通り、昇たちは死を選んでいたとしても幸せになれたでしょう。しかし、生きると同時に死ぬことはできない。何かを取って、何かを切り捨てて、人は前に進まなければならない。闇路を彷徨う彼らには、それが必要だったのです。

 あれこれと書きましたが、端的に言えばこの作品を通して、人間の本質は「自分なりの答えを出し、それを信じて力を尽くすこと」ではないかと伝えたかったということです。この作品が、何かに悩み、迷っている人の支えになれば幸いです。

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闇路 ゆうとと @youtoto238

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