猿と蟹の投資勝負-忍耐の果てに-

緋色有機@休業中

無念の最期を遂げた父親の復讐

昔々、ある日のことです。広い海辺の浜辺で、賢い蟹がおにぎりを拾いました。そのおにぎりを見ていたやんちゃな猿は、お腹がペコペコで、おにぎりが食べたくてたまりませんでした。


猿は、自分が持っていた美味しい柿の種をうまく使って、蟹と交換してもらおうと考えました。猿はおねだり上手で、巧みな言葉で蟹を説得しました。「ねえねえ、蟹さん。この美味しい柿の種と交換してくれませんか?おにぎりと柿の種、どちらもおいしいものですよ。」


蟹は心優しい性格で、猿のおねだりに折れてしまいました。彼は柿の種を受け取り、大切に育てることにしました。しかし、時が経っても柿の実がなっても、蟹自身ではそれを摘むことができませんでした。


困り果てた蟹は、再び猿の助けを借りようと考えました。「お願い、猿さん。私の育てた柿の実を取ってくれませんか?私には手が届きませんので。」と蟹は頼みました。


しかし、猿は自分勝手な性格で、柿を食べることばかり考えていました。彼は蟹の頼みを無視し、柿を独り占めしてしまいました。


蟹は憤りを感じ、猿に抗議しました。「なんて身勝手な猿だ!私が頼んでいるのに、柿を取ってくれないなんて!」と怒りをぶつけました。


すると、猿は怒りにまかせて渋柿を手に取り、それを蟹に向かって投げつけました。残忍な猿の行為により、蟹は命を落としてしまったのです。


蟹の息子は、父の仇を討つことを心に誓いました。そして、猿と蟹は、全てを決するために米相場の仕手戦で対決することになりました。


猿は巧妙な売り方で、蟹は賢い買い方で取引を進めました。仕手戦では当初、猿が有利に立ち、蟹は巨額の含み損を抱える苦しい状況になりました。猿は自己満足に浸り、蟹の敗北を確信していました。


しかし、運命は思いもよらぬ展開をもたらしました。その年は天候が不順で、稲作にとっては厳しい年となりました。米の値段は大幅に上昇し、市場は混乱に陥りました。


蟹は冷静な判断力と忍耐強さを持ちながら、着実に米を買い続けました。彼は父の仇を討つという信念と、市場の変動に着目した知恵を結集していたのです。


やがて、米の価格は急上昇し、猿の売り方は逆風にさらされました。猿は大量の含み損を抱え、踏み上げを恐れて慌てふためくばかりでした。


一方、蟹は着実に買い進めた米が高騰し、巨額の含み益を手にしていました。市場は蟹の方に傾き始め、勝利の兆しを見せました。


とうとう、猿は経済的な破産を迎えることとなりました。彼は自らの欲望に振り回され、相場の流れを見誤ってしまったのです。


蟹の勝利は周囲に広まり、海や森の動物たちは蟹を讃えました。彼は父の仇を討つことに成功し、同時にあきらめずに努力し続けることの大切さを教えられました。


蟹は、悲しみと喜びを胸に秘めながら、猿に対する復讐を果たし、自らの生きる道を見つけました。彼はその後も買い続け、努力を重ねながら、自身の成功を積み重ねていくのでした。


この物語は、蟹の勇気と忍耐、そして努力の大切さを伝えるものであり、後世に語り継がれることとなりました。


[おしまい]

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