14.臨赤



         *



 こうたたえる高臼こううすいただき

 大青だいせいせいを映しげつうつわたたえる

 みぎわ破砕はさい白神はくしんかべん

 べて天意てんい相応そうおうしゅ天下てんげに問う


 てんかいこつにく しつ神性しんしょう

 死者ししゃひつ転生てんしょう 会者えじゃ定離じょうり

 じょう不在朝ふざいちょう 希望きぼう漲溢ちょういつ

 そん必定ひつじょう 臨赤玉りんしゃくぎょく



                       呂南方『臨赤』



 * * *



 表意


 あおぞらの如き湖を湛える高臼こううすの頂は

 青い大き星(地球)を映して月如げつじょえんの器量を讃えている

 海や湖の水際みずぎわで砕け散っている白玉の力(死屍しし散華さんげ)もまた

 押し並べてこれ(月如艶)が皇帝に相応しいことをしゅ天下てんげ(妣國ははのくに伊弉冉いざなみ)に問うている(どうだ相応ふさわしいだろうと)


 天も海も、遺骸にも生ける肉体にも、すべからく神性が備わっている

 死者は必ず転生する 出会った者も必ず離れる

 捻じ曲がった正しくない心の存在しない朝(月の統治する時代)には希望が満ち溢れている

 子々孫々(月の子の月夜げつよ)の世まで広く長くあるだろう、せきぎょくの加護のその下に



 * * *



 裏意


 高臼こううす山頂湖などという小さなものに映し見ている

 異地いち(地球)からの借り物の力を、さも「得たり」と笠に着て偉そうに帝位につく器など知れたもの

 水に溶けるような厄介な死屍しし散華さんげなどという猛毒を持ち込んで

 敵国の意に伏して得た簒奪さんだつ易姓革命えきせいかくめい


 天も海も、遺骸にも生ける肉体にも、すべからく神性が備わっている

 死者は必ず転生する 出会った者も必ず離れる

 優れた主君の存在しない朝(月の統治する時代)には、良君主待望の嘆きに満ち溢れている

 太陽は赤翡翠の中にあるに違いない



 * * *



 孫彌そんや――はくおすくにいみな


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白玉の昊 起章 ④ 珠邑ミト @mitotamamura

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