地面は揺れずに胸は揺れる

@battera13

地面は揺れずに胸は揺れる

「地震でも起きればいいのに」

 月曜の朝はいつもだるい。俺は騒ぎ立てるアラームを止め、テレビをつけた。地震のニュースはやっていない。

「あたりまえだ」

 ぼやきながらパンを口に放り込み家を出た。

「寒い」

 12月になると向かい風にも冷やかさが混じる。駅のアナウンスは平常運転。

 地震願望を抱きつつ会社に行くも誰もいない。うるさい上司や足を引っ張る同僚も。妙にワクワクしてきた。「やっぱり地震が起きたんだー。誰もいない。俺の天下だー」

 意味不明な快哉を叫び会議室でくつろぐ。でも、昼の12時になってもだれもいない。寂しい……。

「誰かいないのー」

 ドアが開き、経理の吉田が入ってきた。チェック柄の事務服の胸が揺れる。清楚と色気がただよってきた。

「木島くん、何でいるの? 今日は創立記念日で休みよ」あちゃー、恥ずかしい…。「聞こえてたわよ。俺の天下だーって。うふふ」えっ、マジ?うわー、穴があったら入りたい……。

「どう、お昼一緒にしない?あたしも間違えて出勤しちゃったんだ。勘違い同士…。ねっ?」地震は起きなかったけど天下は取れた気分だ。そういえば今日は12月3日。まだ24日じゃない……。

 自信を持て。木島!


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