第27話


,あれから徳島は毎週末や祝祭日など休みとなれば、ゲームにログインをして射撃の技術、スニーキングの技術やサバイバル技術を上げていた。


毎回、勝つというわけではなかったが、ゲームの世界では能力や技術が数値化されており、技術を身に付けたという実感が得られ、しかもゲームを終えて、現実の世界に戻ると筋肉痛が出てくるので、自分の身体が鍛えられているという実感も得られるのだ。


徳島は、今の生活に満足していた。

もちろん、妻を探すという目的もあるので、毎回ゲームへのログインは夕方から夜にかけてがメインだ。


そんな生活をしていると、カテジナから連絡が入った。



今度の休日に、徳島にゲームにログインしてもらいたいとのことだ。


徳島は了承をして、その日の仕事を終える。

ゲームの世界で身体が鍛えられることにより、現実でも、体型が変わってきはじめている。


また感覚なども鋭敏になってきているのか、人の気配や匂いなども感知できるようになってきたのだ。


職場で後ろから部下に呼び止められる前に振り向いたり、足音や気配を消す事が癖になっており、隣を通っても気付かれないこともあった。


そんな平日を過ごし、休日になると、徳島はカテジナとの約束通り、ゲームにログインをする。


するといつものゲームの待機場所ではなく、カテジナと初めてあった艦長室にログインした。


目の前にはカテジナが座っており、徳島を見てにこやかに笑っている。


「お久しぶりね。どうぞ。座ってください。」


カテジナが徳島を座るように促す。徳島は促されるままに座る。

すると目の前の机の上に2つのコーヒーが出現する。


「相変わらず、この世界の『動作を省く』という状態は慣れないな。」


そう、この世界は望めば結果だけを表示する事が可能だ。

例えば、今、徳島の目の前で、カテジナが行った、


『コーヒーを淹れて徳島と自分の前にある机の上に置く』


という動作を省いたことで徳島の目の前にいきなりコーヒーが出現したことだ。


ゲームではこのような事をするとチートになってしまうので、動作を省くことはできない。


だからこそ、徳島はいつまで経っても慣れないのだが、カテジナはゲームを運営する側なので、関係なく使ってくる。


「まぁまぁ、気にしないで。迂遠な生活よりも、無駄なことは省いて生活するのは最近の若者が、タイパ、コスパを求めていることからも分かるでしょう。」


カテジナはコーヒーを一口飲み、にこやかに笑う。


「さて、徳島さん。あなたもこの世界に慣れてきて、ゲームでも、良い成績をおさめているわね。そこで、今度から、貴方と同じようにゲームにログインする人と対戦できるようにしようと思うの。」


徳島はカテジナの言葉に頷き、


「問題ない。こちらもそろそろ自分がどれだけ腕を上げたか実践してみたかったところだ。」


徳島の言葉にカテジナが嬉しそうに頷く。


「そう言ってくれて嬉しいわ。もちろん、一対一ではなくてNPCもいるわ。後、これはまだ実験段階なのだけど、普通にスマホやPCでログインしている人とも対戦できるようにもしたいと思うの。どちらかというとこちらの方が先になるかもね。」


徳島はカテジナの言葉に頷いた。


「こちらはどちらでも構わない。妻のことはどれだけ調べがついている?」


カテジナは徳島の目の前に紙を出現させる。


「詳しくは目の前のレポートに書いてあるけど、口頭でも言うわね。」


カテジナはさらにコーヒーを飲み、喉を潤す。


「結論から言うと貴方の奥さんは別の世界に飛ばされているみたい。私の魔術が阻まれているから、なかなか手強いけど、もう少し詳しく調べてみるわね。」


徳島はカテジナの言葉に驚くながらも感謝の言葉を述べる。


「ありがとう。今までどんなに調べても見つからなかったのに。そうか、アイツは別の世界にいたのか。君と出会っていなかったら、もっと驚いていたと思うけど、目の前でこんな世界を見せられるとあんまり驚かないな。」


カテジナはフッと笑い、


「私自身、死んだと思ったらこの世界に転生してびっくりしたわよ。奥さんは元気にしているみたいよ。」


カテジナはそこで一息つき、言葉を続ける。


「奥さんの目の前には素敵な男性が現れているみたいだけどね。」


徳島は慌ててカテジナに質問する。


「えっ!どういうこと!?」


カテジナは徳島を安心させるように、手で制す。


「大丈夫、そういうことじゃないから。奥さんは浮気していないわ。奥さんを助けてくれているみたいよ。だいたい、貴方も私という素敵な女性と会っているじゃない。」


徳島は安心したのか大きく息をつき、


「まぁ、彼女はそういう心配はないと思うけど、できるだけ早く会いたいな。」


「まぁ、奥さんは無事そうだから安心して待っていて。」


徳島は心配だが、心を落ち着かせるために目の前のコーヒーを飲む。現実世界と違って、コーヒーは冷めていることはなく、丁度良い熱さのままだった。


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FPSゲーム大好きおじさんがゲームの世界に乗り込んだら人生が変わるかもしれないと思い必死で頑張っていく。 鍛冶屋 優雨 @sasuke008

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