S型マトリョーシカAI 🪆

上月くるを

S型マトリョーシカAI 🪆





 愛らしい笑顔にすっぽり赤いマフラーをかぶったマトリョーシカ人形が、いきなりドスの効いた声で「ura!!」(万歳!!)と叫んだので、みんな、たいへん驚きました。


 一瞬で顔も、尖った目を釣りあがらせ、ニコリともしない男顔に変わっています。

 しかも、ひょいひょいと服でも脱ぐように、小型版がいくつでも出て来るのです。


 キャ~、こわいよう、この世の鬼だよ~、取って食われるよ~、助けて~(*ノωノ)

 ガタガタふるえ慄いていると、S型マトリョーシカAIが抑揚のない声で告げます。


「よいか、みんな、おれさまの言うことを聞け。さもなくば底の☆を爆発させるぞ」

 ☆がなにか存じませんが、爆発させるというからには怖いものに決まっています。


 


      😺




 そのとき、ひとりの無邪気な子どもが訊きました「おっちゃん、☆ってなあに?」

 母親が慌てて黙らせようとしたのですけど、澄んだ眸の男の子は怖いもの知らず。


「ねえ、おっちゃん、どうしていつも怒ってんの? みんなそばへ行きたくないよ」

「うるさい !! だれかこのガキを黙らせろ !! さもないと即座に☆を破裂させるぞ」


 爆発から破裂に変わったよね……ということは一刻の猶予もないという意味なん?

 恐れる人びとに、大小のS型マトリョーシカAIたちがそっくり同じ顔で凄む凄む。


 さらに、いかなる☆分裂が起こったのか、中型も小型もむくむくと巨大化巨大化。

 こうなってくると、どれが悪徳Sのマスターなのか、一向に見分けがつきません。


 そこへ暗殺予防に仕立てられた影武者数名も加わったので、もうなにがなにやら。「こらっ、分身が勝手に動いちゃいかん!!」どこかで声はしているようですが……。

 

 

 

       🌞




 とそのとき、とつぜん、ドッカーン!! 大爆音がして、天地が吠えに吠えました。

 伏せていた人びとが恐る恐る目を開けてみますと、な、ない、なにもありません。


 イエッサー!! なんとS型マトリョーシカAI は混乱の中で自滅してくれたのです。

 あのうっとうしい威嚇顔がいなくなった空は、そりゃあもう、きれいなブルーで。


 人びとは手を取り合って民謡を歌い踊り、怯えからの解放をよろこび合いました。

 AIの支配から逃れたマトリョーシカは可愛い笑顔にもどりましたとさ。めでたし!!



  。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。



 念のため(笑)時代を遡り、歴史上の何某マトリョーシカ設定にしました。(^-^;




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S型マトリョーシカAI 🪆 上月くるを @kurutan

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