【memo】

In all points as he came, so shall he go.

人は全くその来りしごとくにまた去ゆかざるを得ず。

         『コヘレトの言葉』第5章16節


 “ご主人様”が本編中で唯一直接聖書を引用している箇所のため、出典を載せておきます。

 「誰もがいつかは去っていく」という意味と、「人間は誰しも死ななければならない(が、吸血鬼は死なない)」という二重の意味で使っています。


 あとは設定的なオマケです(笑)。おそらくこの話以外に使うことはないと思われ。



♠︎Gillian Hendricksenジリアン・ヘンドリクセン♠︎

 “ご主人様”のフルネーム。話中で彼が他から呼ばれたり、扮している名前も全てこの変形。

 ヴァイキングの末裔で、死んだのは12世紀という設定。ニックに言わせれば「男色家バガー小児性愛者ペドフィルで、ティベリウスかジル・ド・レのような、救いようのないサディスト。――とはいえ彼らに比したからといって、もちろん私が個人的に彼らの饗宴に参加したことがあるとか、彼らと直接の知り合いだというわけではないが」。

 生前から交易商を営んでいて、余禄で、当時キリスト教徒には禁じられていた高利貸しもしていた。サイモンの息子が病に倒れた時に、高額な治療費を貸し付ける代わりに、その父親の一生と能力を自分に捧げることを誓わせた。中世の医療水準なので、治療の甲斐なく息子はその後死亡。誓約だけが残った。今もロンドンの中心部に〈ヘンドリックス商会〉という事務所を構えている。


 6月5日生まれ 双子座



♠︎Simon Kahnサイモン・カーン♠︎

 “ご主人様”に魅入られてしまった不運な人。息子を救いたい一心で頭を下げ、当時同年代かそれ以上に見えたジリアンに「主人が死ぬまで」の約束で仕えると誓ったが、その時すでにジリアンは吸血鬼だったので、現在まで逃れられずにいる。純粋に能力だけを買われているが、ひょっとしたらサイモンの息子の“病気”というのも、彼を手に入れるために“ご主人様”が仕組んだものだったのではと思わなくもない。

 この人も吸血鬼になっており多少のことでは動じないが、“ご主人様”に比べたらまだ人間味が残っているのではないかと思われる(だからニックと多少通じるものがある)。


 12月25日生まれ 山羊座

※キリスト教的にはクリスマスに生まれると自動的に死後吸血鬼になるとされているのですが、この人ユダヤ人だしな……よって十字架も平気。



♠︎Jack “Robinsonジャック・ロビンソン”♠︎

 本当にどこにでもいるありふれた名前で、父親がわからないので苗字もなかった。のちに、戯れに“Jack Robinson ”(before you can say Jack Robinson=“あっという間に”の意)の名前をもらう。

 ジリアンが彼を拾ったのは単に審美的な意味で容姿が好みだったからだが、視線を合わせた瞬間に深層心理まで読み取っていたのだとすれば、“ご主人様”は自分の同類を探し当てたことになる。ジャックは手なづけられてはいるだろうが、別に操られているわけではない。

 三人(+ニック)の中で唯一、自分の意思で吸血鬼になることを選択した人物(ジリアンは生前の悪行が露見しバレて教会から破門されたために吸血鬼になった)。その“ご主人様”と同様、現在の自分の境遇吸血鬼になったことに満足している。


 8月3日生まれ 獅子座



♠︎Dominic Nolanドミニク・ノーラン♠︎

 本話中では一度も名前が出てきていないが、〈神慈悲〉の人物紹介にある通り、15世紀アイルランド生まれのヴァンパイア(〈神慈悲〉内では〈年寄りオールドニック〉のあだ名で呼ばれている)。横死した先祖の呪いにより、生まれた時から死後に吸血鬼たることを定められた人。

 本人は18世紀にはアメリカに渡ったと言っているが、北アイルランドに先祖の所領があるため首都ベルファストに管理人を置いている(という設定)。

 倫理観がまるでないジリアンや同族のことを嫌っているのに何で律儀に集まりに参加するんだとも思うが、ジリアンは商売柄顔が広いために“使用人運”があるのと、この“業界”では古株の方なので、クリスマスに祖父母の家に一族全員が集合するように、たとえ“いやな伯父さん”のような相手であっても、敬意を表するために顔を出さないといけないのだろう。

 ちなみにニックは既婚(死別)だがジリアンは一度も結婚したことはないし婚外子もいない、いわば筋金入り。


 10月27日生まれ 蠍座(双子座との相性最悪)

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Till Hell Freezes Over 吉村杏 @a-yoshimura

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