第5話 初めての戦い

 僕がララをじっと見つめていると、ララは何かに気付いたように小さく「あっ」と声を上げた。


「見て、ユウリ!」


 ララが指差す方を見ると、洞窟の壁や地面が、紫色の光を放っている。よく見ると、石が光っているようだ。


「あれは全部アメジストだよ」


「そうなの? こっちの世界の宝石って、光ってるんだね」


「う〜ん。全部じゃないんだけどね。アーティファクトの動力にするのは、光っている宝石の方がいいって言われてるよ。光っている方が、力が強いんだって」


「へぇ〜」


 それってやっぱり、宝石じゃなくて、魔石なんじゃないかな……。まぁ、別になんでもいいんだけど。


「じゃあここからは、ユウリが1人でりに行ってね」


 ララは笑顔で手を振る。


「えぇ!? 何で!」


「昨日言ったでしょ? 私たち獣人は、宝石には触れないの。この距離にいても、すごく嫌な感じがするんだから。探す時は、この嫌な気配をたどって行けばいいんだけど、採りに行くのは、ユウリに行ってもらうことになるわ」


「なるほど……」


 僕は紫色に光っている方を見る。


 アメジストは、壁や地面に突き刺さっているような感じだから、簡単に採れそうだ。


「分かったよ……。じゃあ、行ってくる」


「うん、行ってらっしゃ〜い」


 僕は紫色の光に向かって歩く。洞窟の奥へ行くにつれて、その光は強くなって行った。まぶしくて、右手を顔の前にかざして進む。


 こっちの世界の宝石には、魔力みたいなものがあるみたいだけど、たしかに光が暖かい感じがする。これが宝石の力だとすると、獣人には毒になるんだよな。ララは洞窟の中に入ってるけど、大丈夫なんだろうか。


 そして、アメジストがある場所までたどり着くと———。


「うわ〜」


 そこには、数え切れない程のアメジストがある。しかも、よく見ると、僕では持てないほどの大きな石もあった。


「すごいな。アメジストって、元の世界では高級品じゃなかったっけ。こんなにたくさんあったら、大金持ちになれるよ」


 とはいえ、こっちの世界ではただの石だ。僕は『アーキルの銃』の穴に入りそうな、小さなアメジストをいくつか拾って、ポケットにつっ込んだ。


 あとはララが毒にやられない内に、早く洞窟を出て、武器が使えるかどうか、試してみるだけだ。


「よし。終わったよ、ララ!」


 そう言って振り向くと、ララが両手を上下に大きく振って、何かを叫んでいる。


「えー? 何ー? 聞こえないよー」


 僕が叫ぶと、ララは、ゆっくりと口を動かす。


『あ。え・ん・お』


 口の動きからすると、アメンボ……かな。


 池とかにいるやつだよね。ララはアメンボが好きなのかな? でも、何で今アメンボ? それに、洞窟の中に水溜りなんて、なかった気がするけど……。


 じゃりじゃりじゃり


 何かを引きずるような音が聞こえる。


「ん?」


 僕が音のする方を見ると、真っ黒で巨大な蛇が、すごい勢いでこちらへ向かっている。


「うわぁぁ!」


 何あれ! 元の世界にいた蛇と違う! あぁ! アメンボじゃなくて『サーペント』か!


「じゅーうー!」


 ララの声がかすかに聞こえた。


「銃使ってー!」


 銃使って? モンスターが出たら、倒してくれるって言ってたよね?


「アメジストー!」


 ララが叫んでいる。


 そうか。アメジストがあるから、ララはこっちに来れないんだ!


 僕は慌てて『アーキルの銃』をホルダーから外し、銃の上の部分にある穴にアメジストを入れた。


 ふわっ、と『アーキルの銃』がアメジストと同じ色に光る。


 よかった! 古くても、使えるんだ!


 ……あれ? 嘘だろ……?


「ララ! この銃、トリガーがない!」


 これじゃ銃を撃つことなんて、できない。ちょっとでも希望を持った僕がバカだった。


「念じるのー! アーティファクトなんだから、当たり前でしょー!」


 いや、知らないから、そんなこと! 僕は、こっちの世界の人間じゃないんだ! でも今は、そんなことを考えてる場合じゃない。心の中で、念じればいいんだよな。


 銃口をサーペントに向けグッと力を入れると、『アーキルの銃』はより強い光を放つ。


 これなら、いけるかもしれない!


『行けっ!』


 僕が念じると、銃口から紫色の光る玉が発射された。すごい衝撃だ。


 そして、玉は光をき散らしながら、高速で飛んで行き、サーペントは真っ二つになった。


「いぃっ!」


 思っていたより威力があって、驚いた。僕の身体と同じくらいの太さのサーペントが、たった一撃で真っ二つだ。


 僕が銃を見ると、紫色の光はすうっと消えていった。宝石1つで、1回だけ攻撃ができるようだ。


 もしかして、アーティファクトが使える僕って、結構強いんじゃないか?


 フェルフォード王国には、3つしかないけど、この世界には、他にも色んなアーティファクトがあるって、国王様が言っていた。


 宝石とアーティファクトを一緒に集めていけば、普通の中学生の僕でも、戦っていけるかもしれない。


「ユウリー! すごーい!」


 遠くでララが、飛びねて喜んでいる。


 あんなに喜んでくれると、なんだか嬉しいな。ララと一緒に世界を旅するのか。何だか楽しくなってきた!


 12個のレアストーンを集めて、ララも、この国も、必ず僕が救ってやるからな!




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


この物語は、児童小説コンテストに応募する為のものなので、ここで終わりです。


最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。

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フェルフォードの石板〜宝石とアーティファクトを探す旅レアストーンを探し出し獣人の国を守れ〜 碧絃(aoi) @aoi-neco

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