サキュバスさんまだまだ配信を続ける
王都での居場所を確立した後、サキアはしばらく王都を離れることにした。
というのもこれもまた取材のためと、王都の中で本格的に魔族探しが教会を主導として始まったからである。
教えてくれたのはレイナなのだが、そこにアリスも加わる形で王都から離れるように言われてしまったからだ。
『まさかこうしてなんの繋がりもなかったあなたと協力するなんてね』
『ふふっ、レイナ様もサキア様に夢中になったお方です。であるならば協力するのは必然では?』
『それもそうね。両親も既に呪縛から解き放たれているし、教会に関してはすぐに決着はするでしょう』
今回、サキアは王都で好き勝手しすぎた。
それはもう本来であれば魔族が介入しない部分にまでサキアの魔の手は入り込み、古来より続く一国の在り方を傾けてしまうほどになった。
国を傾けたのがサキアという美女……ある意味で傾国の美女という言葉がカチッと当て嵌まるほどだ。
「姉様は無茶をしすぎだ。私たちがどれだけ心配したと――」
「はいは~い! お姉さまも分かってるはずだからそれくらいにしましょうねぇ」
何もない荒野を歩くのは三人の美女。
サキアとリルア、そしてもう一人の妹分でもあり最近になって合流したティアラである。
「悪かったって言ってるだろうが。つうか俺は好きにやらせてもらってるだけだし誰かの許可なんて要らん。それに心配も無用だっての」
「……はぁ。そう言われるのは分かっているが!」
可愛らしいリルアと違い、ボーイッシュで気の強そうな印象を与える見た目のティアラは性格も勇ましいサキュバスだ。
ただ顔立ちは中性的で性格は勇ましくとも、サキアやリルアと同じドスケベサキュバスボディであることは変わらないので、彼女もまた街を歩けば何人もの男に声を掛けられてしまうほどの美貌だ。
「……ったく、悪かったよ。ほらおいでティアラ」
「むっ……素直においでされるがな」
腕を広げてやれば、ティアラは照れた様子でサキアに抱き着く。
結局、何を言ったところでティアラもまたサキアが大好きなだけ……サキアは本当に同族にとても愛されている。
「ねえお姉さまぁ? あれからも配信は続けているんですか?」
「続けてるよ。あの日は王都の様子と城の様子を生配信してた」
「わお♪」
「配信?」
首を傾げたティアラに反応したのはリルアだ。
「説明しましょう! 配信とはお姉さまがやっている活動のことで、こことは違う別の世界に魔法を通じて映像を届ける試みなのです!」
「すまない。お前は何を言ってるんだ?」
まあ確かに一言だけの説明で分かるわけがないよなとサキアは苦笑した。
(あれから数日……アリスの気持ちが伝わってくるのを見るに順調そうだな)
アリスと繋がっているからこそ、彼女の意思を通じて王都の様子は逐一伝わってくるようなものなので、順調に民を洗脳し扇動していた教会の不正やら何やらが暴かれているようだ。
レイナはともかく、寝室に入った際に間抜けそうで如何にも騙されやすそうな面だった王夫婦の洗脳が解けた後の手腕は凄まじい。
「さ~てと、これからどこに行くかねぇ」
「どこにでも行きますよぉ!」
「……付いてくどこまでも」
こうして、しばらくは三人旅になりそうである。
▼▽
それからの日々を軽く語ろう。
サキアは旅のお供としてリルアとティアラを傍に置き、決して里には一度も戻らずに旅を続けた。
時に王都に戻ったりしてアリスやレイナと再会を喜んだり、宿屋のおばさんの元にも寄ったりして交流を深めたが、当然配信をしない日が空いたりすることなくそれだけはとにかく徹底していた。
そして!
現代世界に届けられる異世界からの映像というただでさえ特異性があるにも関わらず、あまりにも美しすぎるサキアたちが登場するだけでも話題に事欠かないのに、何故か彼女のチャンネルはBANされないという奇跡の体現とも言える中――登録者はついに百万人に到達した。
「おいす~。今日も配信やってくぞ~」
百万人に到達した記念配信、もはやサキアも大御所の仲間入りと言えるか。
流石に三百万人とか五百万人もの登録者が居る配信者と比べると小さいものだが、それでもこの配信者という存在が飽和した中で百万人という記録を出したのは誇れることなのだから。
「今日は記念配信っつうことで温泉からお届けだ。適当に話して、適当にお便りに答えつつコメントにも反応してくぞ」
そう、今彼女は温泉に入りながら配信をしている。
BANされないとはいえ先っぽなどの大事な部分を出したりすることはなく、ちゃんと胸の半分から上をお湯の水面から出すようにしている。
「わぁ、コメントの動きが凄いですよお姉さま!」
「……全く、変態共の巣窟じゃないかやっぱり」
リルアだけでなくティアラも当然のように温泉に入り、二人ともサキアに寄り添うように綺麗な肌を見せながら絶妙に隠れているナイスバディを晒している。
最近では普通のリスナーに混じるように現代の大物芸能人だったり、それこそ大物配信者なんかもコメント欄に良く出没するようになったが、こういうエロを押し出したサキュバスたちの配信において、そんな有名人の輝きも霞むほどに爆速でコメントは流れていってしまう。
「ま、それだけ色んな人が見てくれてるって証だろ――リスナーのみんな、マジでありがとうな」
それはサキアの心からのお礼だった。
リルアとティアラの動きだけでなく、コメント欄が一瞬とはいえ停止してしまうほどにあまりにも美しかったサキアの笑顔……どうして投げ銭が出来ないんだと嘆くコメントと共に、再び爆速でコメントが流れていく。
(まさかこんな風に大きくなるなんて思わなかったよな当初は……)
女として生まれるだけでなく、サキュバスとして生まれた時点で普通じゃない。
それでも何故か現代と繋がることが出来るだけでなく、何故か配信さえも出来てしまうという異常な状況をサキアはここまで利用することが出来た。
かつての世界に生きていた記憶が色褪せないのも配信という形であちらと繋がれている証であり、他に転生者が居たとすればこの感覚はサキア以外には決して味わえないものだろう。
(これからもっと多くのことを巻き込んでやるさ。もちろん現代も含めて、それこそあっちに向かった際に自由に行動できるように更に力を付けてみせる)
本来であれば強くなるための理由もサキアからすれば配信のためとなる。
異世界に生まれた彼女はこうして配信のために生きていくわけだが、これもまた好きなことをして生きていくという言葉を体現しているとも言える。
これからも彼女のサキュバス生は続いていくが、語り継ぐのもまずはここまで。
後はもう、彼女が自分自身で紡ぐ物語だ。
【あとがき】
元々短編扱いだったんですが、思いの外続いちゃった感があります。
とはいえこの辺りでお別れということで、この作品はこれで完結となります。
短い間……いや結構長かった気がしますけど、読んでくださりありがとうございました!
異世界TSサキュバス配信生活~なんやかんややったら現代日本と繋がり、なんやかんやで異世界からの配信が成功してしまった件~ みょん @tsukasa1992
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