6.かわいい…(九条視点)

意外にも良い返事が来たため、翌日ランチを一緒に食べる事にした。


最近の東雲の様子を思い出してふと納得したのは東雲がツンデレだったという事だ。


そう考えれば全ての辻褄が合う。ツンデレだと思うと途端に今までの言動がかわいく思えてくる。


自分にそっちの気はないはずだが東雲の事になると違うようだった。


翌日、駅の前で待ち合わせをし、前日に調べておいたカフェに向かう。


駅前のこの前遭遇した場所に差し掛かった所で東雲の顔が俯きがちになった。


「どうした?具合悪いか?」


「…大丈夫。」


そう言いながらも東雲の表情は暗いままで顔も俯きがちだ。


「もしかしてこの前の事思い出したの?…本当にごめん」


「っ別に…気にしてない」


しばらく歩いていくとお目当てのカフェが見えてきた。くまのクレープがかわいいと人気な場所だ。


そこの前に立ち中に入ろうとしたら東雲が泣きそうな顔をして立ち尽くしていた。


とにかくゆっくり話しをしたかったからとりあえず中に入り、一目につきにくい席に座る。


ランチを頼んだ後にさっきから様子のおかしい東雲に向き直る。


「なあ、本当にどうしたんだ?話してくれないと分かんない。」


少しきつめに話してと言うとやっとぽつりぽつりと話し出した。


この前このカフェに来ようとした途中で九条達と遭遇したこと。

とても悲しくてこのカフェに来ようなんて思わなければ良かったと思ったこと。

このカフェに来てそのことを鮮明に思い出して悲しくなったこと。


全面的に九条達が悪すぎて何も言えない。九条も言い訳みたくなってしまうが事情を話した。


いつも楽しくなさそうな顔をしていたから誘っても来ないだろうと思い、声をかけなかったこと。

でもそうじゃなかったと分かった今はとても後悔していること。


「本当にごめん。人を見た目だけで判断してはいけないって小学生ですら知っているのにな。」


東雲は九条机に頭がつくほど頭を下げているのを見て慌てたのか普通に話している。


「そんなっ、大丈夫です。僕も冷たい言い方だって自覚はあったのに直せなかったから…。いつも家で次こそはって練習もしてたのに」


普通にしゃべっれている事に気づいていない東雲が微笑ましくて思わず言う。


「東雲は頑張り屋さん何だな。」


そういうと東雲はボンっと音がしたかのように顔を真っ赤にした。


「あ…ぅ…っそんなことない、です…」


かわいい…こんなにかわいい生物がいるのか…


九条は思わず顔を両手で覆って深いため息をつく。


何を勘違いしたのか途端に東雲が慌てて顔を真っ青にする。


「あ、あの、ごめんなさい!冗談ですよね…」


「違う違う、こっちの問題。それより、今普通に喋れてたの気づいた?」


東雲は目をぱちくりとさせてしばらく考えていた後に驚いたように口を覆った。


「あ、本当だ。…ぅ」


東雲の目からまた涙がぼろぼろと溢れてきた。


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素直になれないあおいさん ねこ丸3号 @nekomaru3gou

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