第20話 定住
翌朝、アルは起きてくると僕のことをジト目でにらんでくる。
助けてもらえなかった事への強い抗議だろうか?
しかし、リアの
ターゲットにされた不運を嘆いてもらうしかない。
「まぁ、今日からは普通に自分の部屋で寝てくれたら良いからね」
「えっ? 自分の部屋?」
「うん、もう用意してあるよ。アルの部屋とエルの部屋は。僕と同じ建物なのは申し訳ないのだけどね」
困惑の表情を浮かべるアル。
そもそもアルはこの領地に迷惑をかけないようにマシロを返したら出て行くつもりだったのだ。
それがどういうわけかパーティの準備がされてたり、お風呂入れられたり、あまつさえベッドまで補足されたり……。
考えただけで色々とおかしかった。
「ど、どうしてここまでしてくれるのですか?」
「どうして?」
僕は真剣に考える。
しかし、そこに理由はなかった。
行く場所がなくて困っていた知り合いのアルやエルを助けるのに理由がいるだろうか? いや、いらない!
「特に理由はないかな。アルやエルが困ってるなら手を差し伸べるのは普通じゃないかな?」
「ふ、普通じゃない。普通じゃないですよ! そんな今まで誰も手を貸してなんて……」
アルは思わず目から涙を流す。
その様子を見た僕はあたふたとしてしまう。
「じゃあ、今日からみんな手を貸してくれるよ。それに――」
「それに?」
「アルも困ってる人を助けてあげるとね、困ってる人も減っていっていずれはみんな幸せに……ねっ」
「それは夢物語です!」
「夢物語でいいんだよ。やらないで後悔するよりやって後悔した方が良いからね!」
「それも……そうかも」
「だからアルもここに住むよね?」
「あっ……」
――なんでこんな話をしてるのかと思ったら、もしかしてユウ様は私たちがここを出ようとしている事に気づいたのかも。
「その……、私たちは暗殺者ギルドに追われてて……、ユウ様たちに迷惑がかかるかも」
「ここにいる限り、平和は僕が保証するよ。これでもここの……村長らしいからね」
村らしくなってきた時にリアたちに無理やり任命されてしまったのだ。
責任の重い役職だけど、その分みんなの喜びを感じられる。
「そっか……。うん、ユウ様がそこまで言ってくれるならもうしばらくはいてもいいかな……?」
「今はそれでいいよ。いずれ定住させてみせるからね」
「定住……」
それを聞いたアルは顔を真っ赤にさせる。
同じ家にいつまでも一緒に住む。
それがどういう意味なのか、少し考えれば誰でもわかることだった。
「べ、別にそういう意味じゃないからね。た、違うからね!」
僕の方が顔を真っ赤にしてしまう。
そして、二人して笑い合う。
「ユウ様ー、アルちゃんー、そんなところで何をしてるのですかー? 朝ごはんの準備ができましたよー!」
「できたよー!」
リアとエルが手を振っている。
「それじゃあ僕たちも行こうか?」
「はいっ!」
僕とアルはお互い目を合わせたあと、リアたちの方へと駆け出していくのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
ここで第1章が終わりとなります。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ゆっくりプロットを考えておりを見て書かせていただこうと思います。
異世界ゆるふわ開拓記〜万能精霊と始めるチートスローライフ〜 空野進 @ikadamo
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