第19話 パーティ

 大きな食堂には様々な料理が並び、思わずアルもエルも呆然と眺めていた。



「えっと、これ、全部食べて良いの?」



 エルはオドオドと聞いてくる。

 僕は笑顔を見せながら答える。



「もちろんだよ! 足りなかったら言ってね。もっと追加するからね」

「わーい、ありがとー」



 エルはすぐさま手掴みで食事をし始める。

 それを見ていたアルはソワソワし出す。



「え、エル、こっちのカトラリーを使うの」

「カトラリー?」

「このフォークとかだよ」

「使ってみるー!」



 既に口いっぱいに放り込んだ後なのだが、そんなことお構いなしにエルはさらに不器用な手つきでフォークを使っていく。

 トマトを思いっきり突き刺そうとするが、上手く刺さらずにトマトは転がっていく。



「むぅ……」

「ほらほら、頑張って」

「やっぱり手で食べるー!」

「あっ、こらっ」



 二人のやりとりを見て僕は思わず笑みを浮かべる。



「あははっ、自分が食べやすいように食べてくれたらいいよ」



 美味しそうに食事を食べていくエル。

 気がつくとエルのお腹はぽっこりと膨らみ、満足そうな表情を見せていた。






 食事を終えると眠そうな表情を見せるエル。



「寝る前にお風呂に入る。もうすぐ準備終わるけど?」

「入るー!」

「えっ? お風呂ですか!?」



 アルが驚きの表情を見せる。



「こ、ここにはお風呂があるのですか?」

「うん、水道も引き終わったし使いたい放題だよ」

「えっと、それって私たちも使って良いのですか?」

「もちろんだよ。さすがにまだ全部の家にはないけど、僕の家と共用の宿にはあるからね。今日のところは僕の家のものを使ってくれたらいいからね」



「わーい、ありがとー」

「ちょ、ちょっと待ってください。さすがにそれは……。共用の方で構いませんよ」

「さすがに共用はやめておいた方が良いね。そこを使ってるのが全員男の人なんだよ――」



 それでおおよその事情を把握したアルは小さく頷いていた。



「わかったよ。それじゃあお願いします」

「うん」

「じゃあ私と一緒に入りましょうね」

「うん。えっ?」



 まさかのリアが参戦してくるとは思わなかったようで一度頷いてから驚き、声を上げていた。


「まぁ、それならいいかな」

「わ、私はその……」

「わーい、お姉ちゃんも一緒に入ろう!」

「うぅぅ……」



 断り切れなくなってしまい、アルは恨めしそうに声を上げる。

 しかし、結局は抵抗もできずにそのままリアに連れて行かれた。




「もう私、お嫁に行けない……」



 風呂から上がってきたアルはガックリと肩を落としていた。

 それとは別にほくほく顔のリア。



「満喫しました」

「とっても楽しかったー!」



 エルもどこか満足そうだった。



「あとは寝る場所だけど……、どうする?」



 僕はリアに確認を取る。

 するとリアはにっこり微笑む。



「今日は私がみんなと寝ますね」

「えっ!?」

「わーい! お姉ちゃんと一緒だー」



 どうやらまだまだアルの受難は続くようだった。

 僕は両手を合わせると助けを求める目のまま連れて行かれるアルを見送るのだった。

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